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20.3. 認証方式

以下の小節では、認証方式について詳細に説明します。

20.3.1. trust認証

trust認証が指定されるとPostgreSQLは、サーバに接続できる全ての人に対して (データベーススーパーユーザさえも)その人が指定する任意のデータベースユーザ名としてのアクセス権限が付与されていると想定します。 当然ながらdatabaseuser列にある制限は適用されます。 この方式はサーバに接続する際に適切なオペレーティングシステムレベルの保護が掛けられている場合にのみ使用すべきです。

trust認証はユーザが1人のみのワークステーション上でローカル接続を行う場合は適切であると同時に非常に便利です。 複数ユーザが存在するマシン上では一般的に適切ではありません。 とは言っても、ファイルシステムの許可属性を使ってサーバのUnixドメインソケットファイルへのアクセスを制限すればtrust認証を複数ユーザのマシン上で使用することも可能です。 その方法は、19.3. 接続と認証に記載されているようにunix_socket_permissions(およびunix_socket_groupパラメータの可能性もあります)パラメータを設定します。 もしくは、unix_socket_directories設定パラメータでソケットファイルをそれに相応しく制限されているディレクトリにします。

Unixソケット接続を行うただ1つの方法は、ファイルシステムの許可を設定することです。 ローカルのTCP/IP接続は、ファイルシステムにより制限はされていません。 よってローカルでファイルシステムの許可を使用したい場合はpg_hba.confから host ... 127.0.0.1 ...の行を削除するか、trust認証とは異なる方法に変更する必要があります。

TCP/IP接続におけるtrust認証は、trustを指定するpg_hba.confの行によってサーバに接続を許可される全てのマシン上の全てのユーザを信用(trust)できる場合にのみ相応しいものです。 ローカルホスト(127.0.0.1)以外からのTCP/IP接続にtrust認証を用いる理由はほとんど見当たりません。

20.3.2. パスワード認証

パスワードをベースにした認証方式には md5およびpasswordがあります。 これらの方式はパスワードが接続間でどのように送信されるか(すなわち、それぞれMD5-hashed、平文)を別にすれば似たような動作をします。

もしパスワード盗聴攻撃に最大の関心があればmd5を使うのがよいでしょう。 可能ならば、平文のpasswordの使用は常に避けなければなりません。 しかしmd5db_user_namespace機能といっしょに使用することはできません。 接続がSSL暗号化により保護されているのであれば、passwordを安全に使用することができます。 (ただしSSLの使用に依存するという点では、SSL証明書認証を使用した方が良いかもしれません。)

PostgreSQLデータベースパスワードはオペレーティングシステムのユーザパスワードとも別のものです。 各データベースユーザのパスワードはpg_authidシステムカタログテーブルの中に格納されます。 CREATE USER foo WITH PASSWORD 'secret';のように、パスワードはSQLコマンドCREATE USERALTER ROLEを使って管理できます。 もしユーザに対してパスワードが設定されない場合、格納されるパスワードはNULLとなり、そのユーザのパスワード認証は常に失敗します。

20.3.3. GSSAPI認証

GSSAPIは、RFC 2743で定義されている安全な認証のための業界標準のプロトコルです。 PostgreSQLは、RFC 1964によりKerberos認証でのGSSAPIをサポートします。 GSSAPIは、GSSAPIをサポートしているシステムに対して自動認証(シングルサインオン)を提供します。 認証自体は安全ですが、データベース接続を通じて送信されるデータは、SSLが使用されていない場合は平文となります。

GSSAPIサポートは、PostgreSQLを構築する時に有効にしなければなりません。詳細は、16章 ソースコードからインストールを参照してください。

GSSAPIKerberosを使用しているとき、GSSAPIは、servicename/hostname@realmという書式の標準のプリンシパルを使用します。 [訳注:プリンシパルとは大雑把に2つのものを指します。1つはサービスを受けるクライアントで、もう1つはサービスを提供するサーバアプリケーションです。どちらも、認証に関してはKerberosのKDCから見るとクライアントになります] PostgreSQLサーバはサーバにより使われるkeytabに含まれるいかなるプリンシパルも受け付けますが、krbsrvname接続パラメータを使ってクライアントから接続する場合には、プリンシパルの詳細を正確に指定することに注意を払う必要があります。 (32.1.2. パラメータキーワードも参照してください。) ビルド時に./configure --with-krb-srvnam=whateverを使用することで、インストール時のデフォルトはデフォルトのpostgresから変更が可能です。 多くの環境では、このパラメータは変更する必要はないでしょう。 いくつかのKerberosの実装では、異なるサービス名が必要になります。Microsoftアクティブディレクトリではサービス名は(POSTGRES)のように大文字にする必要があります。

hostnameはサーバマシンの完全修飾されたホスト名です。 サービスプリンシパルのrealmはサーバマシンが提起したrealmです。

クライアントのプリンシパルはpg_ident.confで異なるPostgreSQLのデータベースユーザ名にマップできます。 例えば、pgusername@realmを単なるpgusernameにマップできます。 もう1つの方法として、プリンシパル名全体username@realmPostgreSQLのロール名としてマッピングなしに使うこともできます。

PostgreSQLはプリンシパルからrealmを外すパラメータもサポートしています。 この方法は後方互換のためにサポートされているものであり、異なるrealmから来た同じユーザ名の異なるユーザを区別することができませんので、使用しないことを強く薦めます。 この方法を有効にするにはinclude_realmを0に設定してください。 単純な単一realmの設定では、(プリンシパルのrealmがkrb_realmパラメータ内のものと正確に一致するか確認する)krb_realmパラメータと組み合わせることが安全です。 しかし、これはpg_ident.confで明示的なマッピングを指定するのに比べてあまり適切でない選択でしょう。

サーバ鍵ファイルがPostgreSQLサーバアカウントによって読み込み可能(そしてできれば読み込み専用で書き込み不可)であることを確認してください。 (18.1. PostgreSQLユーザアカウントを参照してください。) 鍵ファイルの保存場所はkrb_server_keyfile設定パラメータで指定されます デフォルトは、/usr/local/pgsql/etc/krb5.keytab(もしくはビルド時にsysconfdirで指定されたディレクトリ)です。 セキュリティ上の理由から、システムkeytabファイルで許可するよりも、PostgreSQLサーバ用に別のkeytabファイルを使うことをお薦めします。

keytabファイルはKerberosのソフトウェアによって作成されます。詳細はKerberosのドキュメントを参照してください。 MIT互換のKerberos5実装の例を以下に示します。

kadmin% ank -randkey postgres/server.my.domain.org
kadmin% ktadd -k krb5.keytab postgres/server.my.domain.org

データベースに接続しようとしている時要求されるデータベースユーザ名に一致するプリンシパルのチケットを所有しているか確認してください。 例えば、データベースユーザ名fredに対し、fred@EXAMPLE.COMのプリンシパルは接続できるでしょう。 fred/users.example.com@EXAMPLE.COMのプリンシパルも許可するためには20.2. ユーザ名マップ内に記述されているユーザ名マップを使用して下さい。

次の設定オプションはGSSAPIのためにサポートされています。

include_realm

0に設定されている場合は、認証されたユーザプリンシパルからのrealm名が、ユーザ名マッピング(20.2. ユーザ名マップ)で渡されるシステムユーザ名から外されています。 krb_realmも一緒に使われていない限り、これは複数realm環境で安全ではありませんので、非推奨であり、主に後方互換性のために利用できます。 include_realmをデフォルト(1)にしたまま、プリンシパル名をPostgreSQLユーザ名に変換するためにpg_ident.confで明示的なマッピングを指定することをお薦めします。

map

システムとデータベースの間のマッピングを許可します。詳細は20.2. ユーザ名マップを参照してください。 GSSAPI/Kerberosプリンシパルusername@EXAMPLE.COM(もしくは、あまり一般的ではありませんがusername/hostbased@EXAMPLE.COM)に対しては、もしinclude_realmが0に設定されていない限り、マッピングに使われるユーザ名はusername@EXAMPLE.COM(もしくはusername/hostbased@EXAMPLE.COM)です。 0に設定されている場合には、username(もしくはusername/hostbased)がマッピング時のシステムユーザ名です。

krb_realm

realmをユーザプリンシパル名に一致するように設定します。 もしこのパラメータが設定されている場合はそのrealmのユーザのみが受け付けられます。 もしこれが設定されていない場合は、どのようなrealmのユーザも接続可能で、ユーザ名マッピングが設定されていれば、どれでも影響を受けます。

20.3.4. SSPI認証

SSPIは、シングルサインオンで安全な認証を行うためのWindowsの技術です。 PostgreSQLは、negotiateモードにおいてSSPIを使用します。 これは、可能な場合はKerberosを使用し、他の場合については自動的にNTLMを使用することを意味しています。 SSPI認証は、サーバ、クライアントが共にWindows上もしくはGSSAPIが利用可能な場合はWindowsではないプラットフォームで稼動しているときにのみ動作します。

Kerberos認証を使用しているとき、 SSPIは、GSSAPIと同じように動作します。 詳細は20.3.3. GSSAPI認証を参照してください。

次の設定オプションはSSPIのためにサポートされています。

include_realm

0に設定されている場合は、認証されたユーザプリンシパルからのrealm名が、ユーザ名マッピング(20.2. ユーザ名マップ)で渡されるシステムユーザ名から外されています。 krb_realmも一緒に使われていない限り、これは複数realm環境で安全ではありませんので、非推奨であり、主に後方互換性のために利用できます。 include_realmをデフォルト(1)にしたまま、プリンシパル名をPostgreSQLユーザ名に変換するためにpg_ident.confで明示的なマッピングを指定することをお薦めします。

compat_realm

1に設定されている場合は、(NetBIOS名としても知られている)ドメインのSAM互換名がinclude_realmオプションのために使用されます。 これはデフォルトの動作です。 0に設定されている場合は、ケルベロスユーザプリンシパル名からの真のrealm名が使用されます。

ドメインアカウント(これはドメインメンバーシステムの仮想サービスアカウントを含みます)にて実行されているサーバで、SSPIで認証されているすべてのクライアントがドメインアカウントを使用してる場合を除き、このオプションを無効にしないでください。 さもなくば認証は失敗します。

upn_username

compat_realmと共にこのオプションが有効の場合、認証にはケルベルスUPNからユーザ名が使用されます。 無効(デフォルト)である場合は、SAM互換ユーザ名が使用されます。 デフォルトでは、これらの2つのユーザ名は新しいユーザアカウントでは同じものとなります。

明示的なユーザ名が指定されない場合、libpqはSAM互換名を使用することに注意してください。 libpqもしくはlibpqを基礎としたドライバを使用する場合は、このオプションを無効のままにするか、明示的なユーザ名を接続文字列にて指定してください。

map

システムとデータベースユーザ名の間のマッピングを許可します。 詳細は20.2. ユーザ名マップを参照してください。 GSSAPI/Kerberosプリンシパルusername@EXAMPLE.COM(もしくは、あまり一般的ではありませんがusername/hostbased@EXAMPLE.COM)に対しては、もしinclude_realmが0に設定されていない限り、マッピングに使われるユーザ名はusername@EXAMPLE.COM(もしくはusername/hostbased@EXAMPLE.COM)です。 0に設定されている場合には、username(もしくはusername/hostbased)がマッピング時のシステムユーザ名です。

krb_realm

realmをユーザプリンシパル名に一致するように設定します。もしこのパラメータが設定されている場合は realmのユーザのみが受け付けられます。もしこれが設定されていない場合は、 どのようなrealmのユーザも接続可能で、ユーザ名マッピングが設定されていれば、どれでも影響を受けます。

20.3.5. Ident認証

ident認証方式は、クライアントのオペレーティングシステムのユーザ名をidentサーバから入手し、それを(オプションのユーザ名マップとともに)許可されているデータベースのユーザ名として使用します。 これはTCP/IP接続のみサポートされます。

注記

identが(TCP/IPではない)ローカル接続で指定されている場合、 ピア認証(20.3.6. Peer認証を参照してください)が代わりに使用されます。

次の設定オプションはidentのためにサポートされています。

map

システムとデータベースユーザ名の間のマッピングを許可します。 詳細は20.2. ユーザ名マップを参照してください。

身元特定(Identification)プロトコルについてはRFC 1413で説明されています。 事実上全てのUnix系のオペレーティングシステムの配布には、デフォルトでTCPポート113を監視するidentサーバが付属しています。 identサーバの基本的な機能はどのユーザがポートXからの接続を開始し、自分のポートYへの接続を初期化したのか?というような質問に答えることです。 PostgreSQLは物理的な接続が確立された時にXYの両方を認識するので、接続するクライアントのホスト上のidentサーバに応答指令信号を送ることができ、理論的には与えられたどの接続にもオペレーティングシステムユーザを決定できます。

この手続きの欠点は、クライアントの正直さに頼るところが大きいということです。 もしクライアントマシンが信用されない、もしくは危険に晒されている場合、攻撃者はポート113上でほぼどんなプログラムでも実行することができ、どのユーザ名でも好きに選んで返すことができます。 したがってこの認証方式は、各々のクライアントマシンが厳格な管理下にあり、データベースとシステム管理者が密接に連絡を取り合って動作している、外界から閉ざされたネットワークにのみ適していると言えます。 言い換えると、identサーバが稼働しているマシンを信用しなければなりません。 次の警告に注意してください。

 

身元特定プロトコルは、認証、あるいはアクセス管理プロトコルには意図されていません。

 
 --RFC 1413

いくつかの身元特定サーバは、ユーザ名を(マシンの管理者のみが知っているキーで)暗号化して返すような非標準のオプションを持っています。 このオプションは、身元特定サーバとPostgreSQLとを一緒に使用する場合には、使用してはいけません。 理由はPostgreSQLは、返された文字列を復号化して本当のユーザを決定するための手段を持っていないためです。

20.3.6. Peer認証

peer認証方式はカーネルからクライアント上のオペレーティングシステムのユーザ名を取得し、 それをデータベースユーザ名(オプションのユーザ名マップとともに)として使用することにより動作します。この方法はローカル接続でのみ使用可能です。

次の設定オプションはpeerのためにサポートされています。

map

システムとデータベースのユーザ名のマッピングを許可します。詳細は20.2. ユーザ名マップを参照してください。

Peer認証はオペレーティングシステムが、getpeereid()関数、SO_PEERCREDのソケットパラメータ、もしくは同じような仕組みを提供しているときにのみ使用可能です。現状では、LinuxOS Xを含むBSD系、そしてSolarisに含まれています。

20.3.7. LDAP認証

この認証方式はpasswordと似ていますが、パスワード確認にLDAPを使用する点が異なります。 LDAPはユーザの名前とパスワードの組み合わせの検証のみに使用されます。 そのため、LDAPを使用して認証を行うようにする前に、ユーザはデータベースに存在しなければなりません。

LDAP認証は2つのモードで動作します。1つ目のモードでは、それは単なるバインド・モードを呼び出すものですが、 サーバはprefix username suffixとして区別された名前にバインドします。 一般的に、prefixパラメータはActive Directory環境でのcn=DOMAIN\を特定するために使用されます。 suffixは、Active Directory環境ではない場合でのDNの残りの部分を特定するために使用されます。

2つ目のモードでは、それはsearch/bindモードを呼び出すもので、サーバは最初にldapbinddnldapbindpasswdで指定された、 固定されたユーザ名とパスワードを使用してLDAPディレクトリにバインドします。 それからデータベースにログインしようとしているユーザを検索します。 もしユーザとパスワードが指定されていなかった場合は、ディレクトリに対して匿名でバインドします。 検索はldapbasednのサブツリーまで行われ、ldapsearchattributeで指定された属性に正確に一致するかどうかまで行われます。 この検索において、一度ユーザが見つかるとサーバは切断して、クライアントで指定されたパスワードを使用してこのユーザとして再度ディレクトリにバインドします。これはそのログインが正しいかどうかを検証するためです。 このモードはApache mod_authnz_ldapおよびpam_ldapのように他のソフトウェアと同じように、LDAP認証の仕組みで使用されるものと同じです。 この方法は、ユーザオブジェクトがディレクトリに配置されている場合に、かなりの柔軟性があります。 しかし、LDAPサーバへの2つの分離した接続が作成されます。

次の設定オプションは両方のモードで使用されます。

ldapserver

接続するLDAPサーバの名称もしくはIPアドレスの名称。空白で区切ることで複数のサーバを指定できます。

ldapport

LDAPサーバに接続するためのポート番号。もしポートが指定されていない場合は LDAPライブラリ内のデフォルトポート設定が使用されます。

ldaptls

1に設定すると、PostgreSQLとLDAPサーバ間の接続にTLSによる暗号化を使用します。 これはLDAPサーバへのトラフィックのみを暗号化することに注意してください。— クライアントへの接続はSSLを使用しない限り暗号化されません。

以下のオプションは単純バインド・モードのみで使用されます。

ldapprefix

単純なバインド認証を行う場合のDNを生成する際にユーザ名の前に追加する文字列

ldapsuffix

単純なバインド認証を行う場合のDNを生成する際にユーザ名の後に追加する文字列

以下のオプションはsearch/bindモードのみで使用されます。

ldapbasedn

検索とバインドの認証を行う場合のユーザ名がログインするための検索を始めるためのルートDN

ldapbinddn

検索とバインドの認証を行う場合のディレクトリと検索をバインドするためのユーザのDN

ldapbindpasswd

検索とバインドの認証を行う場合のディレクトリと検索をバインドするためのユーザのパスワード

ldapsearchattribute

検索とバインドの認証を行う場合の検索時のユーザ名に対して一致させる属性。 属性が指定されない場合、属性uidが使用されます。

ldapurl

RFC 4516 LDAP URL。これはその他いくつかのLDAPオプションをより簡潔、かつ一般的な形式で記述する別の方法です。 フォーマットは以下のようになっています。

ldap://host[:port]/basedn[?[attribute][?[scope]]]

scopebaseone,、subのいずれかでなくてはならず、一般的には最後のものです。

非匿名バインド(non-anonymous bind)に対し、ldapbinddnおよびldapbindpasswdは個別のオプションとして指定されなければなりません。

暗号化されたLDAP接続を使用するには、ldapurlに加えldaptlsオプションを使用しなければなりません。ldaps URLの仕組み(直接SSL接続)はサポートされていません。

現在の所、LDAP URLはWindows上ではなく、OpenLDAPのみでサポートされています。

seartch/bindオプションと単純バインドに対するオプションの設定を混在させるのはエラーです。

以下に単純バインドLDAP設定の例を示します。

host ... ldap ldapserver=ldap.example.net ldapprefix="cn=" ldapsuffix=", dc=example, dc=net"

データベースのユーザ、someuserからデータベースサーバに接続を要求された場合、PostgreSQLはDN cn=someuser, dc=example, dc=netおよびクライアントから提供されたパスワードを用いてLDAPサーバにバインドを試みます。 その接続が成功すればデータベースへのアクセスが認められます。

以下はsearch/bind設定の例です。

host ... ldap ldapserver=ldap.example.net ldapbasedn="dc=example, dc=net" ldapsearchattribute=uid

データベースユーザsomeuserとしてデータベースに接続するとき、PostgreSQLは(ldapbinddnが指定されていないので)匿名的にバインドを試み、指定されたベースDNの基で(uid=someuser)の検索を行います。あるエントリが見つかると、見つかった情報とクライアントから与えられたパスワードを用いて、その結果バインドを試みます。その二番目の接続が成功するとデータベースアクセスが認められます。

URLとして記述した同じsearch/bind設定の例です。

host ... ldap ldapurl="ldap://ldap.example.net/dc=example,dc=net?uid?sub"

LDAPに対し認証をサポートする幾つかの他のソフトウェアは同じURLフォーマットを使用します。 従って、設定をより簡易に共有することができます。

ヒント

LDAPはDNの異なる構成要素を区別するため往々にしてコンマとスペースを使用します。 例で示されたように、LDAPオプションを設定する場合、二重引用符で括られたパラメータ値を使用することが必須となることがしばしば必須となります。

20.3.8. RADIUS認証

この認証方法は、RADIUSをパスワード検証として使用するという点を除いてpasswordと似た動作をします。 RADIUSはユーザ名/パスワードの組のみを検証するために使用されます。 よってユーザはRADIUSが認証に使用される以前にデータベースにすでに存在していなければいけません。

RADIUS認証を使用する場合に、設定されたRADIUSサーバにアクセスリクエストメッセージが送信されます。 このリクエストはAuthenticate Onlyの形式になり、ユーザ名, (暗号化された)パスワードNAS識別子を含んでいます。 リクエストはサーバと共有している秘密を用いて暗号化されます。 RADIUSサーバは、このサーバに対してAccess AcceptもしくはAccess Rejectを返します。 RADIUSアカウントのサポートはありません。

RADIUSのために次の設定オプションがサポートされています。

radiusserver

接続するRADIUSサーバの名称もしくはIPアドレス。このパラメータは必要です。

radiussecret

RADIUSサーバとのやり取りに使用される共有の秘密。これはPostgreSQLとRADIUSサーバにおいて 厳密に同じ値にする必要があります。少なくとも16文字以上の文字列が推奨されます。このパラメータは必要です。

注記

使用されている暗号化ベクターはPostgreSQLOpenSSLをサポートするよう構築している場合にのみ暗号論的に強力です。 他の場合にはRADIUSサーバへの伝送は難読化されているだけで、安全ではなく必要な場合は外部のセキュリティ方法を適用すべきです。

radiusport

接続するRADIUSサーバのポート番号。もしポート番号が指定されていない場合は、デフォルトポートである1812が使用されます。

radiusidentifier

RADIUSリクエスト内でNAS Identifierとして使用されている文字列。 ユーザがどのデータベースユーザに対して認証しようとしているか、RADIUSサーバにおいてポリシーを一致させるために何が使用されるか、 を識別するために、このパラメータは2番目のパラメータとして使用されます。 もし識別子が指定されていない場合は、デフォルトのpostgresqlが使用されます。

20.3.9. 証明書認証

この認証方法は、認証のためにSSLクライアント証明書を使用します。 よってこの方法は、SSL接続を使用します。 この認証方法を使用する際は、サーバはクライアントが有効かつ信頼された証明書を提供することを要求します。 パスワードのプロンプトはクライアントに送信されません。 証明書のcn(Common Name)属性は、要求されたデータベースユーザ名と比較されます。 もしそれらが一致した場合はログインが許可されます。ユーザ名マッピングは、cnがデータベースユーザ名と異なるものであることを許可するために使用されます。

次の設定オプションはSSL証明書認証のためにサポートされています。

map

システムとデータベースユーザ名の間のマッピングを許可します。 詳細は20.2. ユーザ名マップを参照してください。

証明書認証を指定するpg_hba.confのレコードにおいて、認証オプションであるclientcert1であるとみなされ、クライアント証明書がこの方式のために必要であるゆえに無効にできません。 cert方式が基本的なclientcert証明書の妥当性確認に追加するのは、cn属性がデータベースユーザ名と合致することの確認となります。

20.3.10. PAM認証

この認証方式は認証機構としてPAM(Pluggable Authentication Modules)を使用することを除いてpasswordのように動作します。 デフォルトのPAMサービス名はpostgresqlです。 PAMはユーザ名/パスワードの組の確認と接続されたリモートホスト名またはIPアドレスを任意に確認するためだけに使用されます。 PAMについての詳細はLinux-PAMページを読んでください。

次の設定オプションはPAMのためにサポートされています。

pamservice

PAMサービス名。

pam_use_hostname

PAM_RHOSTアイテムを通じてPAMモジュールに提供されるものがリモートのIPアドレスかホスト名かを決定します。 デフォルトではIPアドレスが使用されます。 ホスト名にて使用するためにはこのオプションを1にセットしてください。 ホスト名の解決はログインの遅延をもたらします。(ほとんどのPAM設定はこの情報を利用せず、PAM設定がホスト名を使用するために明確に作成された場合のみ、この設定値を考慮する必要があります。)

注記

PAMが/etc/shadowを読み取るように設定されている場合は、PostgreSQLがルートユーザで起動されていないため、認証は失敗するでしょう。 しかしPAMがLDAPや他の認証方法を使用するように設定されている場合は、これは問題ではありません。

20.3.11. BSD認証

この認証方式は、パスワードを照合するためにBSD認証を使用すること以外はpasswordと同じように動作します。 BSD認証は、ユーザ名/パスワードの組の確認のみに使用されます。 それゆえ、ユーザのロールはBSD認証が認証に使用可能となる前にデータベースに存在していなければいけません。 BSD認証フレームワークは現在OpenBSDでのみ利用可能です。

PostgreSQLでのBSD認証は、auth-postgresqlログイン型を使用し、postgresqlログインクラスがlogin.confにて定義されている場合はそれを使った認証を使用します。 デフォルトでは、そのログインクラスは存在せず、PostgreSQLはデフォルトログインクラスを使用します。

注記

BSD認証を使用するために、PostgreSQLユーザアカウント(サーバを起動しているオペレーティングシステムユーザ)が、まずはauthグループに追加されていなければいけません。 authグループはOpenBSDシステムではデフォルトで存在しています。