継承とはオブジェクト指向データベースの概念です。 データベース設計においてこれまでになかった興味深い可能性を広げてくれます。
2つのテーブルcities(都市)テーブルとcapitals(州都)テーブルを作ってみましょう。
州都は本来同時に都市でもありますので、全ての都市をリストする時は何もしなくても州都も表示する何らかの方法が必要です。
賢い人なら次のような案を工夫するかもしれません。
CREATE TABLE capitals (
name text,
population real,
altitude int, -- (フィート単位)
state char(2)
);
CREATE TABLE non_capitals (
name text,
population real,
altitude int -- (フィート単位)
);
CREATE VIEW cities AS
SELECT name, population, altitude FROM capitals
UNION
SELECT name, population, altitude FROM non_capitals;
問い合わせを続ける分には問題はありませんが、例えば、複数の行を更新する時に醜くなります。
より良い解決策は次のような構文です。
CREATE TABLE cities ( name text, population real, altitude int -- (フィート単位) ); CREATE TABLE capitals ( state char(2) ) INHERITS (cities);
この例では、capitalsテーブルの行は親のcitiesテーブルから全ての列、すなわちname(都市名)、population(人口)そしてaltitude(標高)を継承します。
name列のデータ型は、可変長文字列のためにPostgreSQLが初めから備えているtext型です。
州都のテーブルは、これに加えて州を示すstate列を持ちます。
PostgreSQLでは、テーブルは関連付けられたテーブルがあればそれぞれから属性を継承することができます。
以下の問い合わせの例は、州都も含めて、標高500フィート以上に位置する全ての都市を求めるものです。
SELECT name, altitude FROM cities WHERE altitude > 500;
これは以下を返します。
name | altitude -----------+---------- Las Vegas | 2174 Mariposa | 1953 Madison | 845 (3 rows)
その一方、州都ではない標高500フィート以上に位置する都市を見つけ出したい時は次のような問い合わせになります。
SELECT name, altitude
FROM ONLY cities
WHERE altitude > 500;
name | altitude -----------+---------- Las Vegas | 2174 Mariposa | 1953 (2 rows)
ここでcitiesの前に置かれたONLYは、継承階層においてcitiesテーブルの下層にあるテーブルではなく、citiesテーブルのみを参照することを意味します。
既に説明したSELECT、UPDATEおよびDELETEなど数多くのコマンドは、このONLY表記をサポートしています。
継承は多くの場合で便利ですが、一意性制約や外部キーと統合されていないので万能ではありません。 詳細は5.9を参照してください。