伝統的に、新しいインデックスメソッドの実装は、非常に難しい作業を意味していました。 ロックマネージャやログ先行書き込みなどデータベースの内部動作を理解する必要がありました。 GiSTインタフェースは高度に抽象化されており、アクセスメソッドの実装者には、アクセスするデータ型のセマンティクスのみの実装を要求します。 GiST層自身が同時実行性、ログ処理、ツリー構造の検索処理に関する注意を行います。
この拡張性と、他の、扱うことができるデータを対象とした標準検索ツリーの拡張性とを混同すべきではありません。
例えば、PostgreSQLは拡張可能なB-treeとハッシュインデックスをサポートしています。
これは、PostgreSQLを使用して、任意のデータ型に対するB-treeやハッシュを構築することができることを意味します。
しかし、B-treeは範囲述語(<
、=
、>
)のみをサポートし、ハッシュインデックスは等価性問い合わせのみをサポートします。
ですから、PostgreSQLのB-treeで例えば画像群をインデックス付けする場合、「画像xは画像yと同じか」、「画像xは画像yより小さいか」、「画像xは画像yより大きいか」といった問い合わせのみ発行することができます。 この文脈でどのように「同じか」や「より小さいか」、「より大きいか」を定義するかに依存して、これが有意なこともあるでしょう。 しかし、GiSTを基にしたインデックスを使用すれば、問題分野に特化した、おそらくは、「馬の画像を全て見つけたい」、「露出オーバーの写真をすべて見つけたい」といった質問に答えられる手段を作成することができます。
GiSTアクセスメソッドを有効にし、実行するために行なわなければならないことは、ツリーのキーの動作を定義する、複数のユーザ定義のメソッドを実装することです。 当然ながら、これらのメソッドは手の込んだ問い合わせをサポートするためかなり意匠を凝らす必要があります。 しかし、すべての標準的な問い合わせ(B-treeやR-treeなど)ではこれらは、相対的に見てごく簡単です。 まとめると、GiSTは汎用性、コード再利用、整理されたインタフェースと拡張性を兼ね備えたものです。
GiST用の演算子クラスが提供しなければならないメソッドが5つ、オプションで提供可能なメソッドが6つあります。
インデックスの正確性は、same
、consistent
、union
メソッドを適切に実装することで保証されます。
一方、インデックスの効率(容量と速度)はpenalty
とpicksplit
メソッドに依存します。
オプションのメソッドの2つは、compress
とdecompress
です。これによりインデックスはインデックス付けするデータと異なるデータ型のツリーデータを内部で持つことができるようになります。
リーフはインデックス付けするデータ型となりますが、他のツリーノードは何らかのC構造体を取ることができます。
(しかしここでもPostgreSQLのデータ型規約に従わなければなりません。
容量が可変のデータに関してはvarlena
を参照してください。)
ツリーの内部データ型がSQLレベルで存在する場合、CREATE OPERATOR CLASS
コマンドのSTORAGE
オプションを使用することができます。
オプションの8番目のメソッドはdistance
です。
これは演算子クラスに順序付けスキャン(最近傍検索)をサポートさせたい場合に必要です。
オプションの9番目のメソッドfetch
は、compress
メソッドが省略されている場合を除き、演算子クラスがインデックスオンリースキャンをサポートしたい場合に必要になります。
オプションの10番目のメソッドoptions
は、演算子クラスがユーザに固有のパラメータを持つ場合に必要です。
オプションの11番目のメソッドsortsupport
は、GiSTインデックスの構築を高速にするのに使われます。
consistent
インデックス項目p
と問い合わせ値q
が与えられると、この関数はインデックス項目が問い合わせと「一貫性」があるかどうか、つまり、述語「indexed_column
indexable_operator
q
」が、インデックス項目で表現される行に対して真かどうかを決定します。
リーフインデックス項目では、これはインデックス付条件の試験と等価です。
一方で内部ツリーノードでは、これはツリーノードで表現されるインデックスの副ツリーを走査する必要があるかどうかを決定します。
結果がtrue
ならば、recheck
フラグも返されなければなりません。
これは、述語が確実に真なのか一部のみ真なのかを示します。
recheck
= false
ならば、インデックスは述語条件を正確に試験されたことを示し、recheck
= true
ならば行が単に一致候補であることを示します。
この場合、システムは自動的にindexable_operator
を実際の行値に対して評価し、本当に一致するかどうか確認します。
この規則により、GiSTはインデックス構造が非可逆な場合でも可逆な場合でもサポートすることができます。
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_consistent(internal, data_type, smallint, oid, internal) RETURNS bool AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_consistent); Datum my_consistent(PG_FUNCTION_ARGS) { GISTENTRY *entry = (GISTENTRY *) PG_GETARG_POINTER(0); data_type *query = PG_GETARG_DATA_TYPE_P(1); StrategyNumber strategy = (StrategyNumber) PG_GETARG_UINT16(2); /* Oid subtype = PG_GETARG_OID(3); */ bool *recheck = (bool *) PG_GETARG_POINTER(4); data_type *key = DatumGetDataType(entry->key); bool retval; /* * strategy、keyおよびqueryの関数として戻り値を決定してください。 * * インデックスツリー内のどこで呼びだされているかを知るためGIST_LEAF(entry)を使用してください。 * それは、例えば = 演算子をサポートする場合重宝です *(非リーフノードにおける空でないunion()とリーフノードにおける等価性を検査することができます)。 */ *recheck = true; /* もしくは検査が正確であれば偽 */ PG_RETURN_BOOL(retval); }
ここで、key
はインデックス要素であり、query
はインデックスに対して検索される値です。
StrategyNumber
パラメータは、演算子クラスのどの演算子が適用されるかを示します。
これはCREATE OPERATOR CLASS
コマンドの演算子番号の1つに一致します。
演算子の右辺にはいかなる型も来ることがあり、それは左辺に現れるインデックス付けされたデータ型とは違うものかもしれませんので、このクラスにどの演算子を含めたかに依存して、query
のデータ型は演算子に応じて変動することがあります。
(上のコードの骨格は型が1つだけ可能であることを仮定しています。
そうでなければ、query
引数の値を取得するのは演算子に依存しないといけないでしょう。)
consistent
関数のSQL宣言では、実際の型は演算子に依存して何か他のものであるとしても、query
引数の演算子クラスのインデックス付けされたデータ型を使うことをお勧めします。
union
このメソッドはツリー内の情報を統合します。 項目の集合が与えられると、この関数は与えられた項目すべてを表現するインデックス項目を新しく生成します。
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_union(internal, internal) RETURNS storage_type AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_union); Datum my_union(PG_FUNCTION_ARGS) { GistEntryVector *entryvec = (GistEntryVector *) PG_GETARG_POINTER(0); GISTENTRY *ent = entryvec->vector; data_type *out, *tmp, *old; int numranges, i = 0; numranges = entryvec->n; tmp = DatumGetDataType(ent[0].key); out = tmp; if (numranges == 1) { out = data_type_deep_copy(tmp); PG_RETURN_DATA_TYPE_P(out); } for (i = 1; i < numranges; i++) { old = out; tmp = DatumGetDataType(ent[i].key); out = my_union_implementation(out, tmp); } PG_RETURN_DATA_TYPE_P(out); }
ご覧になったように、この骨格でunion(X, Y, Z) = union(union(X, Y), Z)
であるようなデータ型を処理しています。
このGiSTサポートメソッドに適切なunionアルゴリズムを実装することで、このような場合以外のデータ型をサポートすることは非常に容易です。
union
関数の結果は、(インデックス付けされた列の型とは異なるかもしれないし、異ならないかもしれませんが)それが何であれインデックスの格納型の値でなければなりません。
union
関数は新たにpalloc()
されたメモリへのポインタを返さなければなりません。
型の変更がなかったとしても、入力値をそのまま返すことはできません。
上に示したように、union
関数の1番目のinternal
引数は実際はGistEntryVector
のポインタです。
2番目の引数は整数の変数へのポインタであり、無視できます。
(union
関数がその結果値の大きさをその変数に保存するのに必要だったのですが、これはもはや必要ではありません。)
compress
データ項目をインデックスページ内の物理的な格納に適した形式に変換します。
compress
メソッドが省略されている場合、データ項目は変更されずにインデックスに格納されます。
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_compress(internal) RETURNS internal AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_compress); Datum my_compress(PG_FUNCTION_ARGS) { GISTENTRY *entry = (GISTENTRY *) PG_GETARG_POINTER(0); GISTENTRY *retval; if (entry->leafkey) { /* 圧縮バージョンで entry->key を差し替え */ compressed_data_type *compressed_data = palloc(sizeof(compressed_data_type)); /* entry->key ... から *compressed_data を補填 */ retval = palloc(sizeof(GISTENTRY)); gistentryinit(*retval, PointerGetDatum(compressed_data), entry->rel, entry->page, entry->offset, FALSE); } else { /* 通常非リーフ項目に対して行うことはない */ retval = entry; } PG_RETURN_POINTER(retval); }
当然ながらcompressed_data_type
を、リーフノードを圧縮するために変換する特定の型に適合させなければなりません。
decompress
データ項目の格納された表現を、演算子クラスの他のGiSTメソッドで操作できる形式に変換します。
decompress
メソッドが省略された場合、他のGiSTメソッドが直接操作出来るデータ形式で格納されると想定されます。
(decompress
は、必ずしもcompress
メソッドの逆になるわけではありません。
特に、compress
が不可逆な場合、decompress
で元のデータを正確に再構築するのが不可能になります。
他のGiSTメソッドはすべてのデータを再構築することは必要としないかもしれないので、decompress
はfetch
と等価であるとは限りません。)
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_decompress(internal) RETURNS internal AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_decompress); Datum my_decompress(PG_FUNCTION_ARGS) { PG_RETURN_POINTER(PG_GETARG_POINTER(0)); }
上記骨格は、伸長を必要としない場合に適したものです。 (ただし、もちろん、このメソッドを完全に省略する方がさらに簡単なので、このような場合は省略することをお勧めします。)
penalty
新しい項目をツリーの特定の分岐点に挿入するための「コスト」を示す値を返します。
項目は、ツリー内でpenalty
が最小の経路に挿入されます。
penalty
から返される値は非負でなければなりません。
負の値が返された場合、ゼロとして扱われます。
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_penalty(internal, internal, internal) RETURNS internal AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT; -- penalty関数は厳密である必要がない場合もあります
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_penalty); Datum my_penalty(PG_FUNCTION_ARGS) { GISTENTRY *origentry = (GISTENTRY *) PG_GETARG_POINTER(0); GISTENTRY *newentry = (GISTENTRY *) PG_GETARG_POINTER(1); float *penalty = (float *) PG_GETARG_POINTER(2); data_type *orig = DatumGetDataType(origentry->key); data_type *new = DatumGetDataType(newentry->key); *penalty = my_penalty_implementation(orig, new); PG_RETURN_POINTER(penalty); }
歴史的な理由により、penalty
関数は単純にfloat
の結果を返しません。
その代わり、3番目の引数で指定された場所に値を格納しなければなりません。
その引数のアドレスを戻すのが慣例ですが、戻り値それ自体は無視されます。
penalty
関数は優れた性能のインデックスではきわめて重要です。
これは、挿入の段階で新しい項目をツリーに追加する場所を決定する際にどの分岐に従うかを決定するために使用されます。
問い合わせの際、インデックスのバランスが良ければ、検索が速くなります。
picksplit
インデックスページ分割が必要になった時、この関数は、ページ内のどの項目を古いページに残すか、および、どれを新しいページに移動するかを決定します。
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_picksplit(internal, internal) RETURNS internal AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_picksplit); Datum my_picksplit(PG_FUNCTION_ARGS) { GistEntryVector *entryvec = (GistEntryVector *) PG_GETARG_POINTER(0); GIST_SPLITVEC *v = (GIST_SPLITVEC *) PG_GETARG_POINTER(1); OffsetNumber maxoff = entryvec->n - 1; GISTENTRY *ent = entryvec->vector; int i, nbytes; OffsetNumber *left, *right; data_type *tmp_union; data_type *unionL; data_type *unionR; GISTENTRY **raw_entryvec; maxoff = entryvec->n - 1; nbytes = (maxoff + 1) * sizeof(OffsetNumber); v->spl_left = (OffsetNumber *) palloc(nbytes); left = v->spl_left; v->spl_nleft = 0; v->spl_right = (OffsetNumber *) palloc(nbytes); right = v->spl_right; v->spl_nright = 0; unionL = NULL; unionR = NULL; /* 項目自体のベクタの初期化 */ raw_entryvec = (GISTENTRY **) malloc(entryvec->n * sizeof(void *)); for (i = FirstOffsetNumber; i <= maxoff; i = OffsetNumberNext(i)) raw_entryvec[i] = &(entryvec->vector[i]); for (i = FirstOffsetNumber; i <= maxoff; i = OffsetNumberNext(i)) { int real_index = raw_entryvec[i] - entryvec->vector; tmp_union = DatumGetDataType(entryvec->vector[real_index].key); Assert(tmp_union != NULL); /* * インデックス項目の格納場所を決定し、それに合わせてunionLとunionRを更新 * します。v->spl_left もしくは v->spl_right のどちらかに項目を追加します。 * カウンタに留意してください。 */ if (my_choice_is_left(unionL, curl, unionR, curr)) { if (unionL == NULL) unionL = tmp_union; else unionL = my_union_implementation(unionL, tmp_union); *left = real_index; ++left; ++(v->spl_nleft); } else { /* * 右と同じ */ } } v->spl_ldatum = DataTypeGetDatum(unionL); v->spl_rdatum = DataTypeGetDatum(unionR); PG_RETURN_POINTER(v); }
picksplit
関数の結果は渡されたv
構造体を修正することで返されることに注意してください。
v
のアドレスを戻すのが慣例ですが、戻り値それ自体は無視されます。
penalty
同様、picksplit
関数も優れた性能のインデックスのためにきわめて重要です。
penalty
とpicksplit
の実装を適切に設計することが、性能が良いGiSTインデックスの実装を行うことにつながります。
same
2つのインデックス項目が同一の場合に真、さもなくば偽を返します。 (「インデックス項目」はインデックスの格納型の値であり、必ずしも元のインデックス付けされた列の型という訳ではありません。)
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_same(storage_type, storage_type, internal) RETURNS internal AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_same); Datum my_same(PG_FUNCTION_ARGS) { prefix_range *v1 = PG_GETARG_PREFIX_RANGE_P(0); prefix_range *v2 = PG_GETARG_PREFIX_RANGE_P(1); bool *result = (bool *) PG_GETARG_POINTER(2); *result = my_eq(v1, v2); PG_RETURN_POINTER(result); }
歴史的な理由により、same
関数は単純に論理値の結果を返しません。
その代わり、3番目の引数で指定された場所にフラグを格納しなければなりません。
その引数のアドレスを戻すのが慣例ですが、戻り値それ自体は無視されます。
distance
インデックス項目p
と問い合わせ値q
を与えると、この関数は問い合わせ値からのインデックス項目の「距離」を決定します。
この関数は、演算子クラスが何らかの順序付け演算子を含む場合には提供しなければなりません。
順序付け演算子を使用する問い合わせは、まず最小の「距離」を持つインデックス項目を返すことで実装されます。
このためこの結果は演算子の意味と一貫性を持たなければなりません。
リーフインデックスノード項目では、結果は単にインデックス項目との距離を表します。
内部ツリーノードでは、結果はすべての子項目が持つ中から最も最小の距離でなければなりません。
この関数のSQL宣言は以下のようにならなければなりません。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_distance(internal, data_type, smallint, oid, internal) RETURNS float8 AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
Cモジュールにおける対応するコードは次の骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_distance); Datum my_distance(PG_FUNCTION_ARGS) { GISTENTRY *entry = (GISTENTRY *) PG_GETARG_POINTER(0); data_type *query = PG_GETARG_DATA_TYPE_P(1); StrategyNumber strategy = (StrategyNumber) PG_GETARG_UINT16(2); /* Oid subtype = PG_GETARG_OID(3); */ /* bool *recheck = (bool *) PG_GETARG_POINTER(4); */ data_type *key = DatumGetDataType(entry->key); double retval; /* * strategy、keyおよびqueryの関数として戻り値を決定してください。 */ PG_RETURN_FLOAT8(retval); }
distance
関数の引数はconsistent
関数の引数と同一です。
距離の決定において、その結果がエントリの実際の距離よりも大きくならない限り、多少の概算は許されます。
したがって、例えば、幾何学に関するアプリケーションでは、通常は外接矩形への距離で十分です。
内部ツリーノードについては、返される距離はどの子ノードへの距離よりも大きくなることは許されません。
返される距離が正確でない場合、関数は*recheck
を真にセットする必要があります。
(内部ツリーノードについては、計算はいつでも不正確であると見なされるため、これは必要ありません。)
この場合、エグゼキュータはヒープからタプルを取得した後で正確な距離を計算し、必要ならタプルを並べ替えます。
距離関数がリーフノードについて*recheck = true
を返す場合、元の順序づけ演算子の戻り型はfloat8
またはfloat4
でなければならず、また距離関数の結果の値は元の順序づけ演算子の戻り型と比較可能でなければなりません。
なぜならエグゼキュータは距離関数の結果および再計算された順序づけ演算子の結果の両方を利用してソート処理を行うからです。
その他の場合は、結果値の相対的な順序が順序づけ演算子が返す順序と一致する限り、距離関数の戻り値は任意の有限のfloat8
の値とすることができます。
(無限大とマイナス無限大は内部的にNULLなどの場合を処理するために利用するので、distance
関数がこれらの値を戻すことは薦められません。)
fetch
インデックスオンリースキャンで使用するため、データ項目の圧縮されたインデックス表現を元のデータ型に変換します。 返されたデータは元のインデックス値の正確で、何も失われていない複製でなければなりません。
この関数のSQL宣言は以下のようにならなければなりません。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_fetch(internal) RETURNS internal AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
引数はGISTENTRY
構造体へのポインタです。
関数が呼び出された時点では、そのkey
フィールドには、NULLでないリーフデータが圧縮形式で入っています。
戻り値は別のGISTENTRY
構造体で、そのkey
フィールドには、同じデータが元の非圧縮形式で入っています。
opclassの圧縮関数がリーフのエントリに対して何もしないなら、fetch
メソッドは引数をそのまま返すことができます。
また、opclassに圧縮関数がない場合、fetch
メソッドも省略できます。
これは、必然的にno-opになるからです。
Cモジュールにおける対応するコードは次の骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_fetch); Datum my_fetch(PG_FUNCTION_ARGS) { GISTENTRY *entry = (GISTENTRY *) PG_GETARG_POINTER(0); input_data_type *in = DatumGetPointer(entry->key); fetched_data_type *fetched_data; GISTENTRY *retval; retval = palloc(sizeof(GISTENTRY)); fetched_data = palloc(sizeof(fetched_data_type)); /* * fetched_dataを元のデータ型のデータに変換する。 */ /* fetched_dataを使って*retvalに値を入れる。 */ gistentryinit(*retval, PointerGetDatum(converted_datum), entry->rel, entry->page, entry->offset, FALSE); PG_RETURN_POINTER(retval); }
compressメソッドがリーフエントリに対してデータ損失がある場合、演算子クラスはインデックスオンリースキャンをサポートすることができず、fetch
関数を定義してはいけません。
options
演算子クラスの振舞いを制御するユーザに可視のパラメータの集合を定義します。
関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_options(internal) RETURNS void AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
関数にはlocal_relopts
構造体へのポインタが渡されますが、構造体を演算子クラスに固有のオプションの集合で満たすことが必要です。
オプションはマクロPG_HAS_OPCLASS_OPTIONS()
とPG_GET_OPCLASS_OPTIONS()
を使って他のサポート関数からアクセスできます。
my_options()の実装と他のサポート関数からのパラメータの使用の例は以下の通りです。
typedef enum MyEnumType { MY_ENUM_ON, MY_ENUM_OFF, MY_ENUM_AUTO } MyEnumType; typedef struct { int32 vl_len_; /* varlenaヘッダ(直接触らないこと!) */ int int_param; /* 整数パラメータ */ double real_param; /* 実数パラメータ */ MyEnumType enum_param; /* enumパラメータ */ int str_param; /* 文字列パラメータ */ } MyOptionsStruct; /* enum値の文字列表現 */ static relopt_enum_elt_def myEnumValues[] = { {"on", MY_ENUM_ON}, {"off", MY_ENUM_OFF}, {"auto", MY_ENUM_AUTO}, {(const char *) NULL} /* リストの終端 */ }; static char *str_param_default = "default"; /* * 有効性検査の例: 文字列が8バイトより長くないことを検査します。 */ static void validate_my_string_relopt(const char *value) { if (strlen(value) > 8) ereport(ERROR, (errcode(ERRCODE_INVALID_PARAMETER_VALUE), errmsg("str_param must be at most 8 bytes"))); } /* * 充填の例: 文字を小文字に交換します。 */ static Size fill_my_string_relopt(const char *value, void *ptr) { char *tmp = str_tolower(value, strlen(value), DEFAULT_COLLATION_OID); int len = strlen(tmp); if (ptr) strcpy((char *) ptr, tmp); pfree(tmp); return len + 1; } PG_FUNCTION_INFO_V1(my_options); Datum my_options(PG_FUNCTION_ARGS) { local_relopts *relopts = (local_relopts *) PG_GETARG_POINTER(0); init_local_reloptions(relopts, sizeof(MyOptionsStruct)); add_local_int_reloption(relopts, "int_param", "integer parameter", 100, 0, 1000000, offsetof(MyOptionsStruct, int_param)); add_local_real_reloption(relopts, "real_param", "real parameter", 1.0, 0.0, 1000000.0, offsetof(MyOptionsStruct, real_param)); add_local_enum_reloption(relopts, "enum_param", "enum parameter", myEnumValues, MY_ENUM_ON, "Valid values are: \"on\", \"off\" and \"auto\".", offsetof(MyOptionsStruct, enum_param)); add_local_string_reloption(relopts, "str_param", "string parameter", str_param_default, &validate_my_string_relopt, &fill_my_string_relopt, offsetof(MyOptionsStruct, str_param)); PG_RETURN_VOID(); } PG_FUNCTION_INFO_V1(my_compress); Datum my_compress(PG_FUNCTION_ARGS) { int int_param = 100; double real_param = 1.0; MyEnumType enum_param = MY_ENUM_ON; char *str_param = str_param_default; /* * 通常は、演算子クラスが'options'メソッドを含む場合、optionsは常にサポート関数に * 渡されます。しかしながら、'options'メソッドを既存の演算子クラスに追加した場合、 * 前に定義されたインデックスにoptionsがない場合、検査が必要です。 */ if (PG_HAS_OPCLASS_OPTIONS()) { MyOptionsStruct *options = (MyOptionsStruct *) PG_GET_OPCLASS_OPTIONS(); int_param = options->int_param; real_param = options->real_param; enum_param = options->enum_param; str_param = GET_STRING_RELOPTION(options, str_param); } /* サポート関数の残りの実装 */ }
GiSTでのキーの表現には柔軟性がありますので、ユーザに固有のパラメータに依存するかもしれません。
例えば、キーの署名の長さが指定されるかもしれません。
例についてはgtsvector_options()
を参照してください。
sortsupport
ある程度局所性を保つ方法でデータをソートする比較関数を返します。
CREATE INDEX
とREINDEX
コマンドで使われます。
作成されるインデックスの質は、比較関数により決定された順序が入力の局所性をどれだけよく保っているかに依存します。
sortsupport
メソッドは省略可能です。
提供されなければ、CREATE INDEX
は各タプルをpenalty
関数とpicksplit
関数を使ってツリーに挿入することでインデックスを構築します。これはずっと遅いです。
この関数のSQL宣言は以下のようになります。
CREATE OR REPLACE FUNCTION my_sortsupport(internal) RETURNS void AS 'MODULE_PATHNAME' LANGUAGE C STRICT;
引数はSortSupport
構造体へのポインタです。
最低でも、関数は構造体のcomparatorフィールドを埋めなければなりません。
比較関数は引数を3つ取ります。比較するDatumを2つとSortSupport
構造体へのポインタです。
Datumはインデックス付けされる値2つで、インデックスに格納される形式です。すなわち、compress
メソッドにより返される形式です。
完全なAPIはsrc/include/utils/sortsupport.h
で定義されています。
そして、Cモジュール内の対応するコードは以下のような骨格に従うことになります。
PG_FUNCTION_INFO_V1(my_sortsupport); static int my_fastcmp(Datum x, Datum y, SortSupport ssup) { /* ソートのための値zを計算することでxとyの間に順序を確立する */ int z1 = ComputeSpatialCode(x); int z2 = ComputeSpatialCode(y); return z1 == z2 ? 0 : z1 > z2 ? 1 : -1; } Datum my_sortsupport(PG_FUNCTION_ARGS) { SortSupport ssup = (SortSupport) PG_GETARG_POINTER(0); ssup->comparator = my_fastcmp; PG_RETURN_VOID(); }
すべてのGiSTサポートメソッドは通常短期間有効なメモリコンテキストで呼び出されます。
つまりCurrentMemoryContext
は各タプルが処理された後にリセットされます。
そのためpallocしたすべてをpfreeすることに注意するのはあまり重要ではありません。
しかし、サポートメソッドで、繰り返される呼び出しを跨がってデータをキャッシュすることが有用な場合があります。
このためには、fcinfo->flinfo->fn_mcxt
の中で長期間有効なデータを割り当て、そこへのポインタをfcinfo->flinfo->fn_extra
の中に保持してください。
こうしたデータはインデックス操作(例えば1つのGiSTインデックススキャン、インデックス構築、インデックスタプルの挿入)の間有効です。
fn_extra
値を置き換える時に以前の値をpfreeすることに注意してください。
さもないと操作の間リークが蓄積されます。