制御構造はおそらくPL/pgSQLの最も有用(かつ重要)な部分です。 PL/pgSQLの制御構造を使用して、PostgreSQLのデータを非常に柔軟、強力に操作することができます。
関数からデータを返すために使用できるコマンドが2つあります。
RETURN
およびRETURN NEXT
です。
RETURN
RETURN expression
;
式を持つRETURN
は関数を終了し、expression
の値を呼び出し元に返します。
この形式は集合を返さないPL/pgSQL関数で使用されます。
スカラ型を返す関数において、代入のところで説明したように、式の結果は自動的に関数の戻り値の型にキャストされます。 しかし、複合(行)値を返すためには、要求された列集合を正確に導出する式を記述しなければなりません。 これにより、明示的なキャストの使用が必要となることがあります。
出力パラメータを持った関数を宣言した時は、式の無いRETURN
を記述してください。
その時点における出力パラメータの値が返されます。
void
を返すように関数を宣言した場合でも、関数を直ちに抜け出すためにRETURN
を使用できますが、RETURN
の後に式を記述しないでください。
関数の戻り値は未定義とさせたままにすることはできません。
制御が、RETURN
文が見つからない状態で関数の最上位のブロックの終わりまで達した時、実行時エラーが発生します。
しかし、この制限は出力パラメータを持った関数及びvoid
を返す関数には当てはまりません。
このような場合は最上位のブロックが終わった時、RETURN
文が自動的に実行されます。
例を示します。
-- スカラ型を返す関数 RETURN 1 + 2; RETURN scalar_var; -- 複合型を返す関数 RETURN composite_type_var; RETURN (1, 2, 'three'::text); -- 正しい型の列にキャストしなければなりません
RETURN NEXT
およびRETURN QUERY
RETURN NEXTexpression
; RETURN QUERYquery
; RETURN QUERY EXECUTEcommand-string
[ USINGexpression
[, ... ] ];
PL/pgSQL関数がSETOF
を返すように宣言した場合、後続の処理が多少違います。
この場合、戻り値の個々の項目は、sometype
RETURN NEXT
コマンドまたはRETURN QUERY
コマンドで指定されます。
そして、引数のない最後のRETURN
コマンドにより、関数が実行を終了したことが示されます。
RETURN NEXT
は、スカラ型および複合型の両方で使用することができます。
複合型の場合、結果の「テーブル」全体が返されます。
RETURN QUERY
は、問い合わせを実行した結果を関数の結果集合に追加します。
RETURN NEXT
とRETURN QUERY
は、単一の集合を返す関数の中で自由に混合できます。
この場合、連結されたものが結果となります。
実際には、RETURN NEXT
およびRETURN QUERY
は関数から戻りません。
単に関数の結果集合に行を追加しているだけです。
そして、その実行はPL/pgSQL関数内の次の文に継続します。
RETURN NEXT
またはRETURN QUERY
コマンドが連続して実行されると、結果集合が作成されます。
最後の、引数を持ってはならないRETURN
により、関数の終了を制御します
(または制御を関数の最後に移すことができます)。
RETURN QUERY
にはRETURN QUERY EXECUTE
という亜種があり、それは問い合わせが動的に実行されることを指定します。
パラメータ式を、EXECUTE
コマンド内と全く同じように、USING
によって演算された問い合わせ文字列に挿入することができます。
出力パラメータを持つ関数を宣言した時は、式の無いRETURN NEXT
だけを記述してください。
実行の度に、その時点における出力パラメータの値が、関数からの戻り値のために結果の行として保存されます。
出力パラメータを持つ集合を返す関数を作成するためには、出力パラメータが複数の時はSETOF record
を返すように関数を宣言し、単一のsometype
型の出力パラメータの時はSETOF
を返すように関数を宣言しなければならないことに注意してください。
sometype
RETURN NEXT
を使用する関数の例を以下に示します。
CREATE TABLE foo (fooid INT, foosubid INT, fooname TEXT); INSERT INTO foo VALUES (1, 2, 'three'); INSERT INTO foo VALUES (4, 5, 'six'); CREATE OR REPLACE FUNCTION get_all_foo() RETURNS SETOF foo AS $BODY$ DECLARE r foo%rowtype; BEGIN FOR r IN SELECT * FROM foo WHERE fooid > 0 LOOP -- ここで処理を実行できます RETURN NEXT r; -- SELECTの現在の行を返します END LOOP; RETURN; END $BODY$ LANGUAGE plpgsql; SELECT * FROM get_all_foo();
RETURN QUERY
を使用する関数の例を以下に示します。
CREATE FUNCTION get_available_flightid(date) RETURNS SETOF integer AS $BODY$ BEGIN RETURN QUERY SELECT flightid FROM flight WHERE flightdate >= $1 AND flightdate < ($1 + 1); -- 実行が終わっていないので、行が返されたか検査して、行がなければ例外を発生させます。 IF NOT FOUND THEN RAISE EXCEPTION 'No flight at %.', $1; END IF; RETURN; END $BODY$ LANGUAGE plpgsql; -- 利用できるフライトを返し、フライトがない場合は例外を発生させます。 SELECT * FROM get_available_flightid(CURRENT_DATE);
上記のように、RETURN NEXT
およびRETURN QUERY
の現在の実装では、関数から返される前に結果集合全体を保管します。
これにより、PL/pgSQL関数が非常に大量の結果集合を返した場合、性能が低下する可能性があります。
メモリの枯渇を避けるため、データはディスクに書き込まれます。
しかし、関数自体は結果集合全体が生成されるまでは戻りません。
将来のPL/pgSQLのバージョンでは、この制限を受けずに集合を返す関数をユーザが定義できるようになるかもしれません。
現在、データがディスクに書き込まれ始まる時点はwork_mem設定変数によって制御されています。
大量の結果集合を保管するのに十分なメモリがある場合、管理者はこのパラメータの値を大きくすることを考慮すべきです。
プロシージャは戻り値を持ちません。
したがって、プロシージャはRETURN
文なしで終了できます。
早期にコードを抜けるためにRETURN
文を使いたいときには、式を伴わないRETURN
だけを書いてください。
プロシージャが出力パラメータを持っている場合、出力パラメータ変数の最終の値が呼び出し元に返されます。
PL/pgSQLの関数、プロシージャ、DO
ブロックは、CALL
を使ってプロシージャを呼び出しできます。
CALL
を普通のSQLで実行する場合とは、出力パラメータの扱いが異なります。
プロシージャの各INOUT
パラメータはCALL
文の変数と対応しなければならず、プロシージャが返すものは全て、CALL
文が返った後にこの変数に書き戻されます。
以下に例を示します。
CREATE PROCEDURE triple(INOUT x int) LANGUAGE plpgsql AS $$ BEGIN x := x * 3; END; $$; DO $$ DECLARE myvar int := 5; BEGIN CALL triple(myvar); RAISE NOTICE 'myvar = %', myvar; -- prints 15 END $$;
IF
とCASE
文はある条件に基づいて代わりのコマンドを実行させます。
PL/pgSQLには、以下のような3つのIF
の形式があります。
IF ... THEN ... END IF
IF ... THEN ... ELSE ... END IF
IF ... THEN ... ELSIF ... THEN ... ELSE ... END IF
また、以下のような2つのCASE
の形式があります。
CASE ... WHEN ... THEN ... ELSE ... END CASE
CASE WHEN ... THEN ... ELSE ... END CASE
IF-THEN
IFboolean-expression
THENstatements
END IF;
IF-THEN
文は最も単純なIF
の形式です。
THEN
とEND IF
の間の文が条件が真の場合に実行されます。
さもなければそれらは飛ばされます。
例:
IF v_user_id <> 0 THEN UPDATE users SET email = v_email WHERE user_id = v_user_id; END IF;
IF-THEN-ELSE
IFboolean-expression
THENstatements
ELSEstatements
END IF;
IF-THEN-ELSE
文はIF-THEN
に加え、条件評価が偽の場合に実行すべき代替となる文の集合を指定することができます。
(これには条件がNULLと評価した場合も含まれることに注意してください。)
例:
IF parentid IS NULL OR parentid = '' THEN RETURN fullname; ELSE RETURN hp_true_filename(parentid) || '/' || fullname; END IF;
IF v_count > 0 THEN INSERT INTO users_count (count) VALUES (v_count); RETURN 't'; ELSE RETURN 'f'; END IF;
IF-THEN-ELSIF
IFboolean-expression
THENstatements
[ ELSIFboolean-expression
THENstatements
[ ELSIFboolean-expression
THENstatements
... ] ] [ ELSEstatements
] END IF;
選択肢が2つだけではなくより多くになる場合があります。
IF-THEN-ELSIF
は、順番に複数の代替手段を検査する、より便利な方法を提供します。
IF
条件は最初の真である結果が見つかるまで連続して検査されます。
そして関連した文が実行され、その後END IF
以降の次の文に制御が渡されます。
(以降にあるIF
条件の検査はすべて実行されません。)
全てのIF
条件が真でない場合、ELSE
ブロックが(もし存在すれば)実行されます。
機能的には、IF-THEN-ELSE-IF-THEN
コマンドを入れ子にしたものと同じですが、必要なEND IF
は1つだけです。
以下に例を示します。
IF number = 0 THEN result := 'zero'; ELSIF number > 0 THEN result := 'positive'; ELSIF number < 0 THEN result := 'negative'; ELSE -- ふうむ、残る唯一の可能性はその値がNULLであることだ result := 'NULL'; END IF;
ELSIF
キーワードはELSEIF
のように書くことができます。
同じ作業を遂行する別の方法は、以下の例のようにIF-THEN-ELSE
文を入れ子にすることです。
IF demo_row.sex = 'm' THEN pretty_sex := 'man'; ELSE IF demo_row.sex = 'f' THEN pretty_sex := 'woman'; END IF; END IF;
しかし、この方法はそれぞれのIF
に対応するEND IF
の記述が必要です。
従って、多くの選択肢がある場合ELSIF
を使用するよりも厄介です。
CASE
CASEsearch-expression
WHENexpression
[,expression
[ ... ]] THENstatements
[ WHENexpression
[,expression
[ ... ]] THENstatements
... ] [ ELSEstatements
] END CASE;
CASE
の単純な形式はオペランドの等価性にもとづく条件的実行を提供します。
search-expression
は(一度だけ)評価され、その後WHEN
句内のそれぞれのexpression
と比較されます。
一致するものが見つかると、関連したstatements
が実行され、END CASE
の次の文に制御が渡されます。
(以降のWHEN
式は評価されません。)
一致するものが見つからない場合、ELSE
statements
が実行されますが、ELSE
が無いときはCASE_NOT_FOUND
例外を引き起こします。
以下は簡単な例です。
CASE x WHEN 1, 2 THEN msg := 'one or two'; ELSE msg := 'other value than one or two'; END CASE;
CASE
CASE WHENboolean-expression
THENstatements
[ WHENboolean-expression
THENstatements
... ] [ ELSEstatements
] END CASE;
CASE
の検索された形式は論理値式の真の結果に基づく条件付き実行を提供します。
それぞれのWHEN
句のboolean-expression
はtrue
となる1つが見つかるまで順番に評価されます。
その後、関連するstatements
が実行され、その結果END CASE
の次の文に制御が渡されます。
(以降のWHEN
式は評価されません。)
真となる結果が見つからない場合、ELSE
statements
が実行されますが、ELSE
が存在しないときはCASE_NOT_FOUND
例外を引き起こします。
以下は簡単な例です。
CASE WHEN x BETWEEN 0 AND 10 THEN msg := 'value is between zero and ten'; WHEN x BETWEEN 11 AND 20 THEN msg := 'value is between eleven and twenty'; END CASE;
この形式のCASE
は、判定基準が省略されたELSE
句に達した場合に何もしないのではなくエラーなる点を除き、IF-THEN-ELSIF
と全く同一です。
LOOP
、EXIT
、CONTINUE
、WHILE
、FOR
、FOREACH
文を使用して、PL/pgSQL関数で、一連のコマンドを繰り返すことができます。
LOOP
[ <<label
>> ] LOOPstatements
END LOOP [label
];
LOOP
は、EXIT
文またはRETURN
文によって終了されるまで無限に繰り返される、条件なしのループを定義します。
省略可能なlabel
は、ネステッドループにおいてEXIT
およびCONTINUE
文がどのレベルの入れ子を参照するかを指定するために使用されます。
EXIT
EXIT [label
] [ WHENboolean-expression
];
label
が指定されない場合、最も内側のループを終わらせ、END LOOP
の次の文がその後に実行されます。
label
が指定された場合、それは現在またはその上位のネステッドループやブロックのラベルである必要があります。
その後、指名されたループまたはブロックを終わらせ、そのループまたはブロックの対応するEND
の次の文に制御を移します。
WHEN
が指定された場合、boolean-expression
が真の場合のみループの終了が起こります。
さもなければ、EXIT
の後の行に制御が移ります。
EXIT
は、すべての種類のループと共に使用できます。
条件なしのループでの使用に限定されません。
BEGIN
ブロックと共に使用した時、EXIT
によりブロックの次の文に制御が移ります。
この目的のためにラベルが使用されなければならないことに注意してください。
ラベル無しのEXIT
はBEGIN
ブロックに対応するとは決して考えられません。
(これは、ラベル無しのEXIT
がBEGIN
ブロックに対応することを許容するPostgreSQLの8.4より前のリリースからの変更です。)
例:
LOOP -- 何らかの演算 IF count > 0 THEN EXIT; -- ループを抜け出す END IF; END LOOP; LOOP -- 何らかの演算 EXIT WHEN count > 0; -- 上例と同じ結果 END LOOP; <<ablock>> BEGIN -- 何らかの演算 IF stocks > 100000 THEN EXIT ablock; -- これによりBEGINブロックを抜け出す END IF; -- stokcs > 100000 であればここでの演算は省略 END;
CONTINUE
CONTINUE [label
] [ WHENboolean-expression
];
label
が無い場合、すぐ外側のループの次の繰り返しが開始されます。
すなわち、ループ本体の残りの文は飛ばされて、他のループの繰り返しが必要かどうかを決めるため、制御がループ制御式(もし存在すれば)に戻ります。
label
が存在する場合、実行を継続するループのラベルを指定します。
WHEN
が指定された場合、boolean-expression
が真の場合のみループにおける次の繰り返しが始まります。
さもなければ、CONTINUE
の後の行に制御が移ります。
CONTINUE
は全ての種類のループで使用可能です。
条件なしのループに限定されません。
例
LOOP -- 何らかの演算 EXIT WHEN count > 100; CONTINUE WHEN count < 50; -- 50から100を数える、何らかの演算 END LOOP;
WHILE
[ <<label
>> ] WHILEboolean-expression
LOOPstatements
END LOOP [label
];
WHILE
文はboolean-expression
の評価が真である間、一連の文を繰り返します。
条件式は、ループ本体に入る前にのみ検査されます。
以下に例を示します。
WHILE amount_owed > 0 AND gift_certificate_balance > 0 LOOP -- ここで演算をいくつか行います。 END LOOP; WHILE NOT done LOOP -- ここで演算をいくつか行います。 END LOOP;
FOR
ループ[ <<label
>> ] FORname
IN [ REVERSE ]expression
..expression
[ BYexpression
] LOOPstatements
END LOOP [label
];
この形式のFOR
は整数値の範囲内で繰り返すループを生成します。
name
変数はinteger
型として自動的に定義され、ループ内部のみで存在します
(ループ外部で定義しても、ループ内部では全て無視されます)。
範囲の下限、上限として与えられる2つの式はループに入った時に一度だけ評価されます。
BY
句を指定しない時の繰り返し刻みは1ですが、BY
句を用いて指定でき、ループに入った時に一度だけ評価されます。
REVERSE
が指定された場合、繰り返し刻みの値は加算されるのではなく、繰り返しごとに減算されます。
整数FORループの例を以下に示します。
FOR i IN 1..10 LOOP -- i はループ内で 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 の値を取ります。 END LOOP; FOR i IN REVERSE 10..1 LOOP -- i はループ内で 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1 の値を取ります。 END LOOP; FOR i IN REVERSE 10..1 BY 2 LOOP -- i はループ内で 10、8、6、4、2 の値を取ります。 END LOOP;
下限が上限よりも大きい(REVERSE
の場合はより小さい)場合、ループ本体はまったく実行されません。
エラーは発生しません。
label
をFOR
ループに付加することにより、label
を用いて修飾した名前の整数ループ変数を参照できます。
別の種類のFOR
ループを使用して、問い合わせの結果を繰り返し、そのデータを扱うことができます。
以下に構文を示します。
[ <<label
>> ] FORtarget
INquery
LOOPstatements
END LOOP [label
];
target
は、レコード変数、行変数またはカンマで区切ったスカラ変数のリストです。
target
には順次、query
の結果の全ての行が代入され、各行に対してループ本体が実行されます。
以下に例を示します。
CREATE FUNCTION refresh_mviews() RETURNS integer AS $$ DECLARE mviews RECORD; BEGIN RAISE NOTICE 'Refreshing all materialized views...'; FOR mviews IN SELECT n.nspname AS mv_schema, c.relname AS mv_name, pg_catalog.pg_get_userbyid(c.relowner) AS owner FROM pg_catalog.pg_class c LEFT JOIN pg_catalog.pg_namespace n ON (n.oid = c.relnamespace) WHERE c.relkind = 'm' ORDER BY 1 LOOP -- ここで"mviews"はcs_materialized_viewsの1つのレコードを持ちます RAISE NOTICE 'Refreshing materialized view %.% (owner: %)...', quote_ident(mviews.mv_schema), quote_ident(mviews.mv_name), quote_ident(mviews.owner); EXECUTE format('REFRESH MATERIALIZED VIEW %I.%I', mviews.mv_schema, mviews.mv_name); END LOOP; RAISE NOTICE 'Done refreshing materialized views.'; RETURN 1; END; $$ LANGUAGE plpgsql;
このループがEXIT
文で終了した場合、最後に割り当てられた行の値はループを抜けた後でもアクセスすることができます。
この種類のFOR
文のquery
としては、呼び出し元に行を返すSQLコマンドをすべて使用できます。
通常はSELECT
ですが、RETURNING
句を持つINSERT
、UPDATE
またはDELETE
も使用できます。
EXPLAIN
などのユーティリティコマンドも作動します。
PL/pgSQL変数は問い合わせテキストに置き換えられます。 問い合わせ計画は、42.11.1および42.11.2で述べたように、再利用のためにキャッシュされます。
FOR-IN-EXECUTE
文は行を繰り返すもう1つの方法です。
[ <<label
>> ] FORtarget
IN EXECUTEtext_expression
[ USINGexpression
[, ... ] ] LOOPstatements
END LOOP [label
];
この方法は、問い合わせのソースが文字列式で指定される点を除き、前の形式と似ています。
この式はFOR
ループの各項目で評価され、再計画が行われます。
これにより、プログラマは、通常のEXECUTE
文と同じように事前に計画された問い合わせによる高速性と、動的な問い合わせの持つ柔軟性を選択することができます。
EXECUTE
の場合と同様、パラメータ値はUSING
により動的コマンドに挿入できます。
結果を通して繰り返さなければならない問い合わせを指定するもう1つの方法として、カーソルの宣言があります。 これは42.7.4で説明します。
FOREACH
ループはFOR
ループにとてもよく似ています。
しかし、SQL 問い合わせが抽出した行を繰り返す代わりに、配列の要素を繰り返します。
(一般的にFOREACH
は、複合値で表現される構成要素の巡回を意味しますが、配列でない複合値も巡回する亜種が将来は追加されるかもしれません。)
配列を巡回するFOREACH
文を示します。
[ <<label
>> ] FOREACHtarget
[ SLICEnumber
] IN ARRAYexpression
LOOPstatements
END LOOP [label
];
SLICE
がない、またはSLICE 0
が指定された場合、ループはexpression
によって評価されて作成された配列の各要素を繰り返します。
target
変数が各要素の値に順次割り当てられ、各要素に対してループ本体が実行されます。
整数配列の要素を巡回する例を示します。
CREATE FUNCTION sum(int[]) RETURNS int8 AS $$ DECLARE s int8 := 0; x int; BEGIN FOREACH x IN ARRAY $1 LOOP s := s + x; END LOOP; RETURN s; END; $$ LANGUAGE plpgsql;
配列の次元数に関係なく、要素は格納した順番で処理されます。
通常target
は単一の変数ですが、複合値(レコード)の配列を巡回するときは、変数のリストも可能です。
その場合、配列の各要素に対して、変数は複合値(レコード)の列から連続的に割り当てられます。
正のSLICE
値を持つ場合、FOREACH
は単一の要素ではなく多次元配列の低次元部分配列を通して繰り返します。
SLICE
値は、配列の次元数より小さい整数定数でなければなりません。
target
変数は配列でなければなりません。
この変数は、配列値から連続した部分配列を受けとります
ここで部分配列はSLICE
で指定した次数となります。
以下に1次元の部分配列を通した繰り返しの例を示します。
CREATE FUNCTION scan_rows(int[]) RETURNS void AS $$ DECLARE x int[]; BEGIN FOREACH x SLICE 1 IN ARRAY $1 LOOP RAISE NOTICE 'row = %', x; END LOOP; END; $$ LANGUAGE plpgsql; SELECT scan_rows(ARRAY[[1,2,3],[4,5,6],[7,8,9],[10,11,12]]); NOTICE: row = {1,2,3} NOTICE: row = {4,5,6} NOTICE: row = {7,8,9} NOTICE: row = {10,11,12}
デフォルトでは、PL/pgSQL関数の内部で発生したエラーは関数の実行を中止し、実際に上位のトランザクションをアボートします。
BEGIN
ブロックおよびEXCEPTION
句を使用すれば、エラーを捕捉してその状態から回復できます。
その構文は通常のBEGIN
ブロックの構文を拡張したものです。
[ <<label
>> ] [ DECLAREdeclarations
] BEGINstatements
EXCEPTION WHENcondition
[ ORcondition
... ] THENhandler_statements
[ WHENcondition
[ ORcondition
... ] THENhandler_statements
... ] END;
エラーが発生しない時、この形式のブロックは単に全てのstatements
を実行し、END
の次の文に制御が移ります。
しかし、statements
の内部でエラーが発生すると、それ以後のstatements
の処理は中断され、EXCEPTION
リストに制御が移ります。
そしてリストの中から、発生したエラーと合致する最初のcondition
を探します。
合致するものがあれば、対応するhandler_statements
を実行し、END
の次の文に制御が移ります。
合致するものがなければ、EXCEPTION
句が存在しないのと同じで、エラーは外側に伝播します。
EXCEPTION
を含んだ外側のブロックはエラーを捕捉できますが、失敗すると関数の処理は中断されます。
全てのcondition
の名前は付録Aに示したもののいずれかを取ることができます。
分類名はそこに分類される全てのエラーに合致します。
OTHERS
という特別の状態名はQUERY_CANCELED
とASSERT_FAILURE
を除く全てのエラーに合致します。
(QUERY_CANCELED
とASSERT_FAILURE
を名前で捕捉することは可能ですが、賢明ではありません。)
状態名は大文字小文字を区別しません。
同時に、エラー状態はSQLSTATE
コードで指定可能です。
例えば以下は等価です。
WHEN division_by_zero THEN ... WHEN SQLSTATE '22012' THEN ...
エラーが該当するhandler_statements
内部で新たに発生した時、EXCEPTION
句はそのエラーを捕捉できずエラーは外側に伝播します。
なお、上位のEXCEPTION
句はそのエラーを捕捉できます。
EXCEPTION
句がエラーを捕捉した時、PL/pgSQL関数のローカル変数はエラーが起こった後の状態を保ちます。
しかし、ブロック内部における永続的なデータベースの状態は、ロールバックされます。
そのような例を以下に示します。
INSERT INTO mytab(firstname, lastname) VALUES('Tom', 'Jones'); BEGIN UPDATE mytab SET firstname = 'Joe' WHERE lastname = 'Jones'; x := x + 1; y := x / 0; EXCEPTION WHEN division_by_zero THEN RAISE NOTICE 'caught division_by_zero'; RETURN x; END;
制御が変数y
の代入に移ると、division_by_zero
エラーとなり、EXCEPTION
句がそのエラーを捕捉します。
RETURN
文による関数の戻り値は、1を加算した後のx
の値となりますが、UPDATE
コマンドによる結果はロールバックされます。
しかし、前のブロックのINSERT
コマンドはロールバックされません。
したがって、データベースの内容の最終結果はTom Jones
であり、Joe Jones
ではありません。
EXCEPTION
句を含んだブロックの実行に要する時間は、含まないブロックに比べてとても長くなります。
したがって、必要のない時にEXCEPTION
を使用してはいけません。
例42.2 UPDATE
/INSERT
の例外
これはUPDATE
またはINSERT
の実行における例外処理を使用した適当な例題です。
アプリケーションでは実際にこの方式を使うよりも、ON CONFLICT DO UPDATE
を伴ったINSERT
を使うことが推奨されます。本例は主としてPL/pgSQLの制御構造の使い方を示すものです。
CREATE TABLE db (a INT PRIMARY KEY, b TEXT); CREATE FUNCTION merge_db(key INT, data TEXT) RETURNS VOID AS $$ BEGIN LOOP -- 最初にキーを更新する UPDATE db SET b = data WHERE a = key; IF found THEN RETURN; END IF; -- キーが存在しないので、キーの挿入を試行する -- 他者がすでに同一のキーを挿入していたならば -- 一意性に違反する欠陥となります BEGIN INSERT INTO db(a,b) VALUES (key, data); RETURN; EXCEPTION WHEN unique_violation THEN -- 何もしないで、更新を再試行します END; END LOOP; END; $$ LANGUAGE plpgsql; SELECT merge_db(1, 'david'); SELECT merge_db(1, 'dennis');
このコーディングではunique_violation
エラーの原因がINSERT
によるものであり、テーブルのトリガ関数内部のINSERT
によるものでないと仮定します。
また、テーブルに2つ以上の一意インデックスが存在した場合、どちらのインデックスがエラーの原因になろうと操作を再試行するので、誤作動となります。
捕捉したエラーが予測したものであるか検証するために、次節で記述するエラー情報を利用すれば、より安全となります。
例外ハンドラはしばしば、起こった特定のエラーを識別する必要があります。
現在の例外に関する情報を取得する方法は2つあります。
特殊な変数とGET STACKED DIAGNOSTICS
コマンドです。
例外ハンドラの内部では、特殊な変数SQLSTATE
変数が起こった例外に対応したエラーコード(表 A.1のエラーコード表を参照してください)を保有します。
特殊な変数SQLERRM
は例外に関連したエラーメッセージを保有します。
これらの変数は、例外ハンドラの外部では定義されていません。
例外ハンドラの内部では、GET STACKED DIAGNOSTICS
コマンドを使用して、現在の例外に関する情報を取り出すこともできます。
次のようなやり方となります。
GET STACKED DIAGNOSTICSvariable
{ = | := }item
[ , ... ];
各item
は、指定された変数(これは受け取るために正しいデータ型でなければなりません)に代入される状態値を識別するキーワードです。
現在使用可能なステータス項目は表 42.2に表示されています。
表42.2 エラーの診断値
名前 | 型 | 説明 |
---|---|---|
RETURNED_SQLSTATE | text | 例外のSQLSTATEエラーコード |
COLUMN_NAME | text | 例外に関する列名 |
CONSTRAINT_NAME | text | 例外に関する制約名 |
PG_DATATYPE_NAME | text | 例外に関するデータ型名 |
MESSAGE_TEXT | text | 例外の主要なメッセージのテキスト |
TABLE_NAME | text | 例外に関するテーブル名 |
SCHEMA_NAME | text | 例外に関するスキーマ名 |
PG_EXCEPTION_DETAIL | text | 例外の詳細なメッセージのテキスト、存在する場合 |
PG_EXCEPTION_HINT | text | 例外のヒントとなるメッセージのテキスト、存在する場合 |
PG_EXCEPTION_CONTEXT | text | 例外時における呼び出しスタックを記述するテキストの行(42.6.9を参照) |
例外が項目の値を設定しない場合、空文字列が返されます。
以下に例を示します。
DECLARE text_var1 text; text_var2 text; text_var3 text; BEGIN -- 例外を引き起こす処理 ... EXCEPTION WHEN OTHERS THEN GET STACKED DIAGNOSTICS text_var1 = MESSAGE_TEXT, text_var2 = PG_EXCEPTION_DETAIL, text_var3 = PG_EXCEPTION_HINT; END;
以前、42.5.5に記載されていたGET DIAGNOSTICS
コマンドは、現在の実行状態に関する情報を取得します(対して、前述のGET STACKED DIAGNOSTICS
コマンドは一つ前のエラー時点の実行状態を報告します)。
これのPG_CONTEXT
ステータス項目は現在の実行位置を識別するのに役立ちます。
PG_CONTEXT
は呼び出しスタックを記述したテキスト行を含むテキスト文字列を返します。
最初の行は現在の関数と現在実行中のGET DIAGNOSTICS
コマンドを参照します。
次行および後の行は、呼び出しスタック上の呼び出し関数を参照します。
例を示します。
CREATE OR REPLACE FUNCTION outer_func() RETURNS integer AS $$ BEGIN RETURN inner_func(); END; $$ LANGUAGE plpgsql; CREATE OR REPLACE FUNCTION inner_func() RETURNS integer AS $$ DECLARE stack text; BEGIN GET DIAGNOSTICS stack = PG_CONTEXT; RAISE NOTICE E'--- Call Stack ---\n%', stack; RETURN 1; END; $$ LANGUAGE plpgsql; SELECT outer_func(); NOTICE: --- Call Stack --- PL/pgSQL function inner_func() line 5 at GET DIAGNOSTICS PL/pgSQL function outer_func() line 3 at RETURN CONTEXT: PL/pgSQL function outer_func() line 3 at RETURN outer_func ------------ 1 (1 row)
GET STACKED DIAGNOSTICS ... PG_EXCEPTION_CONTEXT
は同種のスタックトレースを返しますが、現在の位置ではなく、エラーが検出されたところの位置を記述します。