オブジェクト識別子(OID)はPostgreSQLの内部で様々なシステムテーブルの主キーとして使用されます。
oid
データ型はオブジェクト識別子を表します。
oid
には別名型もいくつかあります。
reg
と名付けられた何とか
oid
の様々なエイリアスの型は表 8.26からその概要を見ることができます。
oid
データ型は現在、符号なし4バイト整数として実装されています。
このため、大きなデータベース内でデータベース単位での一意性や個別の大きなテーブルで一意性を提供するためには十分な大きさではありません。
oid
データ型自体は、比較以外の演算はほとんど行いません。
しかし、整数としてキャストすることもでき、その場合標準の整数演算子を使用して操作することができます。
(これを行うと、符号付きと符号なしの間で混乱が起きかねないことに注意してください。)
OIDの別名データ型は、専用の入出力ルーチン以外には演算を行いません。
これらのルーチンでは、oid
型が使用するような未加工の数値ではなく、システムオブジェクト用のシンボル名を受け入れたり表示したりできます。
別名データ型により、オブジェクトのOID値の検索が簡単になります。
例えば、mytable
テーブルに関連したpg_attribute
行を確認するには、以下のように記述することができます。
SELECT * FROM pg_attribute WHERE attrelid = 'mytable'::regclass;
次のように記述する必要はありません。
SELECT * FROM pg_attribute WHERE attrelid = (SELECT oid FROM pg_class WHERE relname = 'mytable');
後者もそう悪くないように見えますが、これは過度に単純化されています。
異なるスキーマにmytable
テーブルが複数ある場合には、正しいOIDを選択するために、より複雑なSELECT
が必要となります。
regclass
入力変換ではスキーマパスの設定に従ってテーブル検索を扱いますので、自動的に「正しい検索」を行います。
同様に、テーブルのOIDをregclass
にキャストすることは、数値のOIDのシンボル表示に便利です。
表8.26 オブジェクト識別子データ型
型名 | 参照 | 説明 | 値の例 |
---|---|---|---|
oid | すべて | 数値オブジェクト識別子 | 564182 |
regclass | pg_class | リレーション名 | pg_type |
regcollation | pg_collation | 照合名 | "POSIX" |
regconfig | pg_ts_config | テキスト検索設定 | english |
regdictionary | pg_ts_dict | テキスト検索辞書 | simple |
regnamespace | pg_namespace | 名前空間名 | pg_catalog |
regoper | pg_operator | 演算子名 | + |
regoperator | pg_operator | 引数の型を持つ演算子 | *(integer,integer)
or -(NONE,integer) |
regproc | pg_proc | 関数名 | sum |
regprocedure | pg_proc | 引数の型を持つ関数 | sum(int4) |
regrole | pg_authid | ロール名 | smithee |
regtype | pg_type | データ型の名前 | integer |
名前空間でグループ化されたオブジェクトのOID別名型はすべてスキーマ修飾名を受け入れ、出力時にスキーマ修飾名を表示します。
ただし、現在の検索パスでオブジェクトが見つけられなければ、修飾せずに出力します。
regproc
とregoper
別名型は、一意な(オーバーロードしていない)名前のみを入力として受け入れるため、これらの使用には限度があります。
ほとんどの場合、regprocedure
またはregoperator
を使用するのが適切です。
regoperator
の場合、単項演算子は未使用のオペランドをNONE
と記述することによって指定されます。
ほとんどのOID別名型のさらなる属性は依存性の作成です。
これらの型の1つの定数が格納された式内に存在する場合(列のデフォルト式やビューなど)、参照されるオブジェクトへの依存性を生成します。
例えば、列がnextval('my_seq'::regclass)
というデフォルト式を持つ場合、PostgreSQLはデフォルト式がmy_seq
シーケンスに依存することを理解します。
システムは先にこのデフォルト式が削除されない限り、このシーケンスを削除させません。
プロパティの唯一の例外はregrole
です。
このような式では、この型の定数は使用できません。
OID別名型はトランザクション分離規則に完全には従いません。 プランナも単なる定数として扱いますので、次善の計画になるかもしれません。
システムが使用するもう1つの識別子の型はxid
、すなわちトランザクション(略してxact)識別子です。
これはxmin
システム列およびxmax
システム列のデータ型です。
トランザクション識別子は32ビット長です。
文脈によっては64bitに変形したxid8
が使われます。
xid
の値と違い xid8
の値は厳密に単調増加し、データベースクラスタのライフタイムの中で再利用されることはありません。
システムが使用する3つ目の識別子はcid
、すなわちコマンド識別子です。
これはcmin
システム列およびcmax
システム列のデータ型です。
コマンド識別子も32ビット長です。
システムが使用する最後の識別子はtid
、すなわちタプル識別子(行識別子)です。
これはctid
システム列のデータ型です。
タプルIDはテーブル内の行の物理的位置を識別するための組(ブロック番号、ブロック内のタプルインデックス)です。
(システム列の詳細は5.5で説明します。)