PostgreSQLにおけるマテリアライズドビューはビューのようにルールシステムを使用しますが、あたかもテーブルであるかのような形態で結果を保持します。
CREATE MATERIALIZED VIEW mymatview AS SELECT * FROM mytab;
と
CREATE TABLE mymatview AS SELECT * FROM mytab;
の間の主な違いは、その後にマテリアライズドビューを直接更新できない事と、マテリアライズドビューを作成するために使われた問い合わせがビューと全く同様の方法で保持され、以下のコマンドを用いて最新のデータでマテリアライズドビューを再構築できる事です。
REFRESH MATERIALIZED VIEW mymatview;
マテリアライズドビューに関する情報はPostgreSQLシステムカタログでビューやテーブルに対するものと全く同様に保持されています。 そのため、パーサにとってマテリアライズドビューはテーブルやビューと同じリレーションです。 問い合わせでマテリアライズドビューが参照された時、あたかもテーブルのように、データはマテリアライズドビューから直接返されます。ルールはマテリアライズドビューにデータを投入する時にだけ使用されます。
多くの場合、マテリアライズドビューに格納されているデータの参照は、ビューを通して、あるいはビューから参照されているテーブルを直接参照するよりも高速ですが、データが常に最新であるとは限りません。ですが、時には最新のデータは必要でない事もあります。 販売履歴を記録するテーブルの例を考えてみましょう。
CREATE TABLE invoice ( invoice_no integer PRIMARY KEY, seller_no integer, -- 販売員のID invoice_date date, -- 販売日 invoice_amt numeric(13,2) -- 販売量 );
もし利用者が過去の販売データを速やかにグラフ化可能であってほしいと考えるなら、彼らはデータの要約を望むのであって、最新のデータが不完全である事は気にしないでしょう。
CREATE MATERIALIZED VIEW sales_summary AS SELECT seller_no, invoice_date, sum(invoice_amt)::numeric(13,2) as sales_amt FROM invoice WHERE invoice_date < CURRENT_DATE GROUP BY seller_no, invoice_date ORDER BY seller_no, invoice_date; CREATE UNIQUE INDEX sales_summary_seller ON sales_summary (seller_no, invoice_date);
このマテリアライズドビューは営業担当用に作成されるダッシュボードのグラフを表示するのにぴったりでしょう。 以下のSQLを使った統計情報を更新するジョブを毎晩スケジュールしておくことができます。
REFRESH MATERIALIZED VIEW sales_summary;
それ以外のマテリアライズドビューの用途として、外部データラッパを通じてリモートシステムから取得したデータの高速化が挙げられます。
以下の例はfile_fdw
を用いた単純な例で、実行時間を含みますが、これはローカルシステムのキャッシュ機構を用いているため、リモートシステムへのアクセスと比較した違いの方がここで示したものより劇的です。
マテリアライズドビューにはインデックスを設定することもできますが、file_fdw
はインデックスをサポートしないことに注意してください。
この有利な点は、他の種類の外部データアクセスには当てはまらないでしょう。
セットアップ:
CREATE EXTENSION file_fdw; CREATE SERVER local_file FOREIGN DATA WRAPPER file_fdw; CREATE FOREIGN TABLE words (word text NOT NULL) SERVER local_file OPTIONS (filename '/usr/share/dict/words'); CREATE MATERIALIZED VIEW wrd AS SELECT * FROM words; CREATE UNIQUE INDEX wrd_word ON wrd (word); CREATE EXTENSION pg_trgm; CREATE INDEX wrd_trgm ON wrd USING gist (word gist_trgm_ops); VACUUM ANALYZE wrd;
file_fdw
を直接用いて字句のスペルチェックをしてみましょう。
SELECT count(*) FROM words WHERE word = 'caterpiler'; count ------- 0 (1 row)
EXPLAIN ANALYZE
によれば以下の通りです:
Aggregate (cost=21763.99..21764.00 rows=1 width=0) (actual time=188.180..188.181 rows=1 loops=1) -> Foreign Scan on words (cost=0.00..21761.41 rows=1032 width=0) (actual time=188.177..188.177 rows=0 loops=1) Filter: (word = 'caterpiler'::text) Rows Removed by Filter: 479829 Foreign File: /usr/share/dict/words Foreign File Size: 4953699 Planning time: 0.118 ms Execution time: 188.273 ms
代わりにマテリアライズドビューを使った場合、問い合わせは非常に速くなります。
Aggregate (cost=4.44..4.45 rows=1 width=0) (actual time=0.042..0.042 rows=1 loops=1) -> Index Only Scan using wrd_word on wrd (cost=0.42..4.44 rows=1 width=0) (actual time=0.039..0.039 rows=0 loops=1) Index Cond: (word = 'caterpiler'::text) Heap Fetches: 0 Planning time: 0.164 ms Execution time: 0.117 ms
どちらの場合でも、wordの綴りは間違っています。では、我々が望んでいたであろう結果を得るために、もう一度file_fdw
とpg_trgm
を使ってみます。
(訳注:検索条件の正しい綴りは「caterpillar」)
SELECT word FROM words ORDER BY word <-> 'caterpiler' LIMIT 10; word --------------- cater caterpillar Caterpillar caterpillars caterpillar's Caterpillar's caterer caterer's caters catered (10 rows)
Limit (cost=11583.61..11583.64 rows=10 width=32) (actual time=1431.591..1431.594 rows=10 loops=1) -> Sort (cost=11583.61..11804.76 rows=88459 width=32) (actual time=1431.589..1431.591 rows=10 loops=1) Sort Key: ((word <-> 'caterpiler'::text)) Sort Method: top-N heapsort Memory: 25kB -> Foreign Scan on words (cost=0.00..9672.05 rows=88459 width=32) (actual time=0.057..1286.455 rows=479829 loops=1) Foreign File: /usr/share/dict/words Foreign File Size: 4953699 Planning time: 0.128 ms Execution time: 1431.679 ms
マテリアライズドビューを使用した場合:
Limit (cost=0.29..1.06 rows=10 width=10) (actual time=187.222..188.257 rows=10 loops=1) -> Index Scan using wrd_trgm on wrd (cost=0.29..37020.87 rows=479829 width=10) (actual time=187.219..188.252 rows=10 loops=1) Order By: (word <-> 'caterpiler'::text) Planning time: 0.196 ms Execution time: 198.640 ms
定期的にリモートのデータをローカルに更新せねばならない事を許容できるのであれば、代わりに性能上の便益を得られることでしょう。