PostgreSQL 9.3.2文書 | ||||
---|---|---|---|---|
前のページ | 上に戻る | 付録 F. 追加で提供されるモジュール | 次のページ |
pg_stat_statementsモジュールは、サーバで実行されたすべてのSQL文の実行時の統計情報を記録する手段を提供します。
このモジュールは追加の共有メモリを必要とするため、postgresql.confのshared_preload_librariesにpg_stat_statementsを追加してモジュールをロードしなければなりません。 このことは、このモジュールを追加もしくは削除するには、サーバを再起動する必要があるということを意味しています。
このモジュールにって収集された統計情報は、pg_stat_statementsというシステムビューを通して利用することができます。 このビューは、1行に対して、それぞれ個々の問い合わせ、データベースID、およびユーザIDを含んでいます(モジュールが記録できるSQL文の最大数まで)。 ビューの列は、表F-20に示す通りです。
表 F-20. pg_stat_statementsの列
名前 | 型 | 参照元 | 説明 |
---|---|---|---|
userid | oid | pg_authid.oid | SQL文を実行したユーザのOID |
dbid | oid | pg_database.oid | SQL文が実行されたデータベースのOID |
query | text | 代表的な文の文字列 (track_activity_query_size バイトまで) | |
calls | bigint | 実行回数 | |
total_time | double precision | SQL文の処理に費やした総時間(ミリ秒単位) | |
rows | bigint | SQL文によって取得された、あるいは影響を受けた行の総数 | |
shared_blks_hit | bigint | SQL文によってヒットした共有ブロックキャッシュの総数 | |
shared_blks_read | bigint | SQL文によって読み込まれた共有ブロックの総数 | |
shared_blks_dirtied | bigint | 文によりダーティ状態となった共有ブロックの総数 | |
shared_blks_written | bigint | SQL文によって書き込まれた共有ブロックの総数 | |
local_blks_hit | bigint | SQL文によってヒットしたローカルブロックキャッシュの総数 | |
local_blks_read | bigint | SQL文によって読み込まれたローカルブロックの総数 | |
local_blks_dirtied | bigint | SQL文によりダーティ状態となったローカルブロックの総数 | |
local_blks_written | bigint | SQL文によって書き込まれたローカルブロックの総数 | |
temp_blks_read | bigint | SQL文によって読み込まれた一時ブロックの総数 | |
temp_blks_written | bigint | SQL文によって書き込まれた一時ブロックの総数 | |
blk_read_time | double precision | SQL文がブロック読み取りに費やした、ミリ秒単位の総時間 (track_io_timingが有効な場合。無効であればゼロ) | |
blk_write_time | double precision | SQL文がブロック書き出しに費やした、ミリ秒単位の総時間 (track_io_timingが有効な場合。無効であればゼロ) |
これらビューと関数pg_stat_statements_reset
は、pg_stat_statements拡張機能をインストールすることで明示的にインストールされたデータベースのみで利用可能です。
しかしながら、統計情報はpg_stat_statementsモジュールがサーバにロードされていれば、ビューの存在に関わらず、サーバのすべてのデータベースについて記録されます。
セキュリティ上の理由から、スーパーユーザ以外のユーザは、他のユーザによって実行された問い合わせの文字列を見ることができません。 ただし、ユーザのデータベースにビューがインストールされている場合、統計情報についてはそれらユーザから見ることができます。
計画作成が可能な問い合わせ(つまりSELECT、INSERT、UPDATE、DELETE)は、内部のハッシュ計算に従った、同一の問い合わせ構造を持つ限り、1つのpg_stat_statements項目に組み合わせられます。 典型的には、2つの問い合わせは、問い合わせの中に現れるリテラル定数の値以外、意味的に等価である場合、この目的では同一とみなされます。 しかし、ユーティリティコマンド(つまりこの他のコマンドすべて)は問い合わせ文字列のテキストを基に厳密に比較されます。
他の問い合わせと合致させるために定数値が無視された場合、pg_stat_statementsの表示の中で定数は?に置換されます。 問い合わせの残りのテキストは、pg_stat_statements項目に関連付いた特定のハッシュ値を持つ、1つ目の問い合わせのテキストです。
一部の状況では、見た目上異なるテキストを持つ問い合わせが1つのpg_stat_statements項目にまとめられることがあります。 通常これは意味的に等しい問い合わせでのみ発生しますが、関連がない問い合わせが1つの項目にまとめられるハッシュ競合の可能性がわずかながら存在します。 (しかしこれは別のユーザまたは別のデータベースに属する問い合わせでは発生することはあり得ません。)
ハッシュ値は問い合わせの解析後の表現に対して計算されますので、search_pathの設定が異なる等の要因の結果として異なる意味を持つ場合、同じテキストを持つ問い合わせが別の項目として現れるという、反対もまたあり得ます。
pg_stat_statements_reset() returns void
pg_stat_statements_reset
はpg_stat_statementsによってこれまでに収集したすべての統計情報を削除します。
デフォルトでは、この関数はスーパーユーザのみ実行することができます。
pg_stat_statements.maxは、このモジュールによって記録されるSQL文の最大数(すなわち、pg_stat_statementsビューにおける行の最大数)です。これを超えて異なるSQL文を検出した場合は、最も実行回数の低いSQL文の情報が捨てられます。 デフォルトは1000です。 このパラメータはサーバの起動時にのみ指定できます。
pg_stat_statements.trackは、どのSQL文をモジュールによって計測するかを制御します。 topを指定した場合は(直接クライアントによって発行された)最上層のSQL文を記録します。 allは(関数の中から呼び出された文などの)入れ子になった文も記録します。 noneは文に関する統計情報収集を無効にします。 デフォルトはtopです。 この設定はスーパーユーザだけが変更できます。
pg_stat_statements.track_utilityは、このモジュールがユーティリティコマンドを記録するかどうかを指定します。 ユーティリティコマンドとは、 SELECT、INSERT、UPDATEおよびDELETE以外のすべてです。 デフォルトはonです。 この設定はスーパーユーザのみが変更できます。
pg_stat_statements.saveは、サーバを終了させる際に文の統計情報を保存するかどうかを指定します。 offの場合、統計情報は終了時に保存されず、サーバ開始時に再読み込みもされません。 デフォルト値はonです。 このパラメータはpostgresql.confファイル、またはサーバコマンドラインでのみ設定できます。
このモジュールは、約pg_stat_statements.max * track_activity_query_sizeバイトの追加の共有メモリを必要とします。 pg_stat_statements.trackにnoneが設定されていても、モジュールがロードされている限り常にこのメモリが消費されることに注意してください。
これらのパラメータはpostgresql.confの中で設定しなければなりません。 典型的な使用方法は以下のようになります。
# postgresql.conf shared_preload_libraries = 'pg_stat_statements' pg_stat_statements.max = 10000 pg_stat_statements.track = all
bench=# SELECT pg_stat_statements_reset(); $ pgbench -i bench $ pgbench -c10 -t300 bench bench=# \x bench=# SELECT query, calls, total_time, rows, 100.0 * shared_blks_hit / nullif(shared_blks_hit + shared_blks_read, 0) AS hit_percent FROM pg_stat_statements ORDER BY total_time DESC LIMIT 5; -[ RECORD 1 ]--------------------------------------------------------------------- query | UPDATE pgbench_branches SET bbalance = bbalance + ? WHERE bid = ?; calls | 3000 total_time | 9609.00100000002 rows | 2836 hit_percent | 99.9778970000200936 -[ RECORD 2 ]--------------------------------------------------------------------- query | UPDATE pgbench_tellers SET tbalance = tbalance + ? WHERE tid = ?; calls | 3000 total_time | 8015.156 rows | 2990 hit_percent | 99.9731126579631345 -[ RECORD 3 ]--------------------------------------------------------------------- query | copy pgbench_accounts from stdin calls | 1 total_time | 310.624 rows | 100000 hit_percent | 0.30395136778115501520 -[ RECORD 4 ]--------------------------------------------------------------------- query | UPDATE pgbench_accounts SET abalance = abalance + ? WHERE aid = ?; calls | 3000 total_time | 271.741999999997 rows | 3000 hit_percent | 93.7968855088209426 -[ RECORD 5 ]--------------------------------------------------------------------- query | alter table pgbench_accounts add primary key (aid) calls | 1 total_time | 81.42 rows | 0 hit_percent | 34.4947735191637631
Takahiro Itagaki <itagaki.takahiro@oss.ntt.co.jp>
。
Peter Geoghegan <peter@2ndquadrant.com>
により問い合わせの正規化が追加されました。