まず第一に、ディスク上にデータベース格納領域を初期化する必要があります。 この格納領域を データベースクラスタ と呼びます (SQLではカタログクラスタという用語が使用されます)。 データベースクラスタはデータベースの集合で、稼働しているデータベースサーバのただ1つのインスタンスを通して管理されます。 初期化が終わると、データベースクラスタにはtemplate1という名前のデータベースが含まれています。 その名前から推測できるように、これはその後に作成されるデータベースのテンプレートとして使われます。 従って、実際の作業に使用すべきではありません。 (クラスタ内における新しいデータベースの作成については第18章を参照してください。)
ファイルシステムの観点から見ると、データベースクラスタというのは、全てのデータが格納される1つのディレクトリということになります。 これは データディレクトリもしくはデータ領域と呼ばれます。 どこにデータを格納するかは完全にユーザの自由です。 特にデフォルトの領域はありませんが、一般的によく使われるのは/usr/local/pgsql/dataか/var/lib/pgsql/dataです。 データベースクラスタを初期化するためには、PostgreSQLと一緒にインストールされるinitdbコマンドを使用してください。 データベースクラスタのファイルシステム上の場所は-Dオプションで示します。 例えば次のようにします。
$ initdb -D /usr/local/pgsql/data
このコマンドは、前節で説明したPostgreSQLユーザアカウントでログインして実行する必要があります。
もし指定したディレクトリが存在しない場合は、initdbはその新しいディレクトリを作成しようとします。 しかし(ここのアドバイスに従って非特権アカウントを作成した場合など)作成権限がない場合があります。 その場合は(rootとして)手動でディレクトリ自体を作成し、その所有者をPostgreSQLユーザに変更します。 下記がその例となります。
root# mkdir /usr/local/pgsql/data root# chown postgres /usr/local/pgsql/data root# su postgres postgres$ initdb -D /usr/local/pgsql/data
データディレクトリがすでに初期化されているように見える場合は、initdbは実行を拒否します。
データディレクトリにはデータベースの中の全てのデータが保持されるため、権限を持たない人のアクセスを確実に制限することが不可欠です。 ですから、initdbはPostgreSQLユーザ以外にはアクセス権を与えません。
しかし、ディレクトリの内容は安全ですが、デフォルトのクライアント認証の設定では、全てのローカルユーザはデータベースに接続でき、データベーススーパユーザになることさえ可能です。 他のローカルユーザを信用しない場合、initdbの-W、--pwprompt、--pwfileオプションのいずれか1つを使用して、データベーススーパユーザにパスワードを付与することを推奨します。 また、デフォルトのtrust認証モードを使用しないように、-A md5もしくは-A passwordを指定してください。 もしくは、initdbの後、初回のサーバの起動の前に、生成済みのpg_hba.confファイルを変更してください。 (他の穏当な方法として、ident認証やファイルシステムの権限を使用して、接続を制限することもできます。 詳細については第19章を参照してください。)
initdbはまた、データベースクラスタのデフォルトのロケールを初期化します。 通常は、環境のロケール設定を初期化されたデータベースにそのまま適用します。 データベースに異なるロケールを指定することも可能です。 詳細については項20.1を参照してください。 特定のデータベースクラスタ内で使用されるソート順はinitdbで設定され、initdb後は全データをダンプし、initdbを再実行し、ダンプしたデータを再読み込みさせる手順を踏む以外変更することができません。 また、CやPOSIX以外のロケールを使用する場合には性能上の影響もあります。 従って、最初の時点でこの選択を正しく行なうことが重要です。
またinitdbは、データベースクラスタのデフォルトの文字セット符号化方式も設定します。 通常これは、ロケールの設定と合うものが選ばれなければなりません。 詳細は項20.2を参照してください。